アレンの分子内環状付加反応を合成戦略とする天然物の合成

1986 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 61870089
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 早川 謙二 九大, 薬学部, 助手 (80142074)
• キーワード: アレン中間体 / 分子内Diels-Alder反応 / 多環式ラクトン合成 / フラン環転送反応 / インドール合成

研究概要

複雑な構造を有する天然物の分子骨格を構築するのに分子内環状付加反応は極めて有用な反応である。本研究では特に分子内親ジエン剤としてアレン中間体を用いることで容易に各種多環式化合物を合成することに成功した。即ち、アレン分子の"直交性"という幾何学的特性を巧みに活用することにより従来の常識では考えられなかった高い反応性を実現することができ、これにより有用な天然物の基本骨格を極めて容易に合成できるようになった。
1.多環式ラクトン合成:アレニルエーテルを分子内親ジエン剤として分子内Diels-Alder反応を行なうとジヒドロフラン型の付加体が高収率で生成する。本化合物は酸触媒存在下容易に水付加が起こり、ラクトールとなりこれを酸化することにより天然物の基本骨格として多く見られる縮環型ラクトンへと導くことに成功した。本法により各種多環式ラクトン類を高収率で合成し、更に本法をキーステップとしたノルセスキテルペン系天然物であるPlatyphyllideの合成にも成功した。
2.フラン環転送反応:ジエン部分にフラン誘導体を用いたアレニルエーテルの分子内Diels-Alder反応は、付加だけに留まらず更に進行して、一挙に縮環式フラン化合物を高収率で与えることが判明した。本法は又、反応性中間体であるイソベンゾフラン誘導体の発生法としても有用であり多環式化合物の合成法としての有用性が一段と増した。本法を利用して、フラノセスキテルペン類の基本骨格である三環式フラン誘導体の簡易合成に成功した。
3.インドール合成:アレン類の高い反応性をジエナミドとの分子内Diels-Alder反応に応用し、インドール骨格の新規合成法の開発に成功した。本法はベンゼン誘導体から出発する従来のインドール合成法に比べ、非環式化合物から一段階でインドール骨格を構築してしまう点が極めてユニークであり応用範囲も広い。

研究成果

• [文献書誌] 早川謙二,大薄悟,兼松顕: Tetrahedron Lett.27. 947-950 (1986)
• [文献書誌] 早川謙二,安河内孝則,兼松顕: Tetrahedron Lett.27. 1837-1840 (1986)
• [文献書誌] 早川謙二,大薄悟,兼松顕: Tetrahedron Lett.27. 4205-4208 (1986)
• [文献書誌] 早川謙二,竹脇誠,藤本一郎,兼松顕: J.Org.Chem.51. 5100-5105 (1986)
• [文献書誌] 山口泰史,早川謙二,兼松顕: J.Chem.Soc.,Chem.Commun.(1987)