研究課題
試験研究
本能および情動行動を含む行動の発現時には、大脳内においてそれぞれの行動に特異的おるいは互いに干渉し合う多くの回路が作動している。このとき種々の内因性生理活性物質が神経伝達物質として、あるいは神経伝達修飾物質として重要な役割を果たしている。大脳によるある特定の行動の制御機構を解明するためには、ある特定の行動時に作動する神経回路においてどのような生理活性物質がどのように作用しているかを定量的および経時的に分析する手法や機器を開発する必要がある。本研究目的は無麻酔・無拘束の動物の情動行動時に大脳特定部位から単一ニューロン活動を長時間記録しながら、その部位の神経伝達物質などの動態を測定し得るバイオセンサーを開発し、それらを一体化したシステムを完成することである。本研究ではカーボンファイバーを作用電極としてin vivoボルタメトリー法を用いセロトニン代謝産物である5-hydroxy-indole-ocetic acidを測定した。またセロトニン溶液を充填した電気泳動用微小ガラス電極をカーボファイバー電極と一体化し、ウレタン麻酔下ラットの大脳皮質中に刺入し、通電量と酸化電流量の関係を調べた結果、70×60nCまでの通電量と酸化電流量はほぼ直線関係を示し110×60nCで飽和した。以上の結果より、本研究で作成したカーボンファイバー電極はラット脳内で十分適用できると考え、さらに慢性ニューロン活動記録用の白金イリジウム線をカーボンファイバー作用電極と一体化し、ラット視床下部におけるセロトニン放出、ニューロン活動および摂食行動の関係を解析した。同時記録を行った30個のニューロン中、セロトニン放出の増加に同期して12個(40%)が活動高進を示した。本研究は生体内で起こる現象の物理変化と化学変化を同一部位で同時記録しようとする試みであり、脳分析装置への応用が期待できる。
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