研究課題
1.金蒸気レーザーはビーム径が44mm、ビーム開口角3mradと大きいため、これをコア径600μmの石英ファイバー(N.A.値0.4)に効率よく導光する光学系の開発は、本レーザーの医療応用上重要なものの1つである。用いられたレンズはA:焦点距離85mm、曲率43.77、径60mmの平凸レンズ、B:焦点距離79mm、径84mm、厚さ(tc)60.1mmの非球面両凸レンズ、C:焦点距離79mm、径84mm、厚さ(tc)26mmの非球面ソニスカス、レンズの3種類である。光伝達率はレーザー共振器先端出力と、ファイバー出射端のレーザー出力を、コーヒレント社201、サイエンテック社362、SP社404の3種の出力計を用いて検討した。SP社404による出力値は他の2社のものの約30%低値を示したので、この実験系より除外した。レンズの違いによる光伝達率は、レンズAで24〜26%、レンズBで16.6〜17.6%、レンズCで20%で、現状では非球面よりも一般的な平凸レンズが良好であった。すなわちレンズAを用いた光学系では共振器出力4.8Wの場合、ファイバー先端出力1.15Wと最も大きく、なお改良の余地は大きいものの、臨床的に癌治療に必要な出力として、応用可能なものであった。2.泌尿器科的光力学的治療上、膀胱全壁照射用360度全方向光散乱ファイバーが最も有用である。臨床的には簡便で、堅牢でなければならないが、石英ファイバーでは先端の破損が問題となる。この点からオリンパス社製内視鏡を改造し、その先端に直径7mmの石英球状チップを装着し、この中に光散乱用脂肪乳材を注入し、一方内視鏡軸内チャンネルより石英ファイバーをこの中心部に挿入する方法を開発した。2-3%の脂肪乳材を用いた場合光散乱は最も効率よく、短時間で治療が完了できることを明らかにした。家兎膀胱移植腫瘍に対する光力学的治療に応用し、良好な治療効果が得られ、臨床的に応用の価値が大きいものと考えられた。
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