研究概要 |
本研究では, 要求仕様が満たすべき品質について明確な定義を与え, さらに実世界の要求を表現する複合モデルに基づいた高品質なソフトウェア要求仕様の定義支援手法とその手法を実現した要求定義環境を開発し, それからの有用性について検討したものであり, 得られた主な成果は次のとおりである. 1.実世界の要求を表現するモデルとして単一モデルでは不十分であり, 複合したモデルが必要であることを明らかにした. さらに, 実際の要求に良く適合する複合モデルとして要求フレームモデルを提案した. 2.要求フレームに基づいて開発した日本語要求言語JRDLと図形要求言語GRDLにより, 要求記述の書き易さと読み易さを向上させ, 構文上の誤りと, 従来の手法では殆んど不可能であった意味上の誤りの検出手法を確立した. さらに, 文脈情報を扱った観点からJRDLを拡張することによって, より自然な要求言語X-JRDLを開発した. 3.要求フレームから導出可能な述語論理のモデルに基づいて要求分析支援手法, 要求記述の検証手法, および要求仕様の変更支援手法を開発した. これらの手法によって要求仕様の正確性・利用可能性・テスト可能性・追随性・実現可能性を向上できることを示した. 4.要求フレームから導出可能なフローモデルに基づいて要求仕様からの設計情報検索支援手法を開発した. 5.要求フレームから導出可能なフローモデルに基づいて, ラピッドプロトタイピング手法, 要求仕様からのソフトウェア文書化支援手法, ソフトウェア概略設計支援手法を開発した. こらによって要求仕様の正確性と利用可能性が向上することを示した. 6.上記の手法を実現した要求定義環境を構築し, 実例を用いて手法と環境の有用性を明らかにした.
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