研究概要 |
器質的に心拍の不整脈を発生しない者でも、運動や緊張により不整脈が発生することがしばしばあり、高齢化社会に移行しつつある現在、多発するであろうこれらの危険性を予め防止するためHeart rate variability(HRV)心拍変動性測定器を開発試作することを本研究では目的としている。HRVのうち、自己回帰モデルを用いた新しい心拍変動性ARVは、不整脈の検出、特徴抽出に優れた分解能を示すので、まずこれの詳細な検討を行った。すなわち、周波数領域で必要とする周波数成分だけを自己回帰モデルの特性方程式を用いて抽出分離する方式について検討を加え、この分離抽出した周波数におけるARVを計算することで、ARVの分解能を更に高めようとするものである。この理論的解明は終了し、目下学会誌に投稿準備中である。 次に、ARVを用いた簡便な不整脈検出装置の開発製作は、まず、パーソナルコンピュータによってオフラインで実現した。100拍の心拍R-R間隔時系列を用いた場合の計算時間は約1.5分で、満足できるものとはいえない。しかし、ワンボードマイコンに移すための基礎的検討ができた。この研究結果をもとに、装置の簡易化,小形化,オンライン化を目指して、ワンボードマイコンZ80を用いて装置を作製した。この結果、一応初期の目的は達成することができた。すなわち、10秒に1回の割合でARVの値を表示することができた。ただし、この場合心拍の検出は、胸部双極誘導による心電計からの遠隔操作を行っている。従って、この装置をジョギング中の健康管理などに用いることを可能にするためには、脈拍からの心拍検出などについて検討しなければならない。更に、オンラインで検出計算した結果の表示については、パーソナルコンピュータと接続して、ARV以外の各種データについても記録表示できるようにすることが望ましい。そこで来年度は検出記録面より装置を完全なものとしたい。
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