研究分担者 |
伊藤 守 (財)実験動物中央研究所, 研究員 (00176364)
松崎 哲也 (財)実験動物中央研究所, 研究員 (30167647)
岡本 宗裕 北海道大学, 獣医学部, 助手 (70177096)
奥 祐三郎 北海道大学, 獣医学部, 講師 (60133716)
大林 正士 酪農学園大学, 酪農学部, 教授 (60001517)
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研究概要 |
エキノコックスの防除の観点から、その主要な中間宿主であるエゾヤチネズミにおいてテニア科条虫間の交叉免疫を基礎とした「種間競争」の概念を確立し生物防除の方向を示すことを目的として以下の研究を実施した。 1.エゾヤチネズミの系統育成ならびに計画生産:(1)初産日齢:73〜100日齢,(2)妊娠率:雌雄を1〜2週間同居させた場合、年間35%台であった,(3)産仔数:平均で5.1±1.6匹,(4)妊娠期間:18〜22日,(5)離乳率:年間を通じて70〜90%,(6)供給数:月産約30匹の計画生産が可能となった。また、兄妹交配による近交系の育成を実施し、F5に達した。 2.エゾヤチネズミにおけるミトコンドリアDNAの遺伝的多型:DNAの制限酵素切断型に変異が存在することが明らかになり、地域集団間、エキノコック感受性などの解析の標識として利用が期待される。 3.エゾヤチネズミの免疫学的特性:(1)血中免疫グロブリン・アイソタイプ:マウス血清中IgMと比較的強く、また、微弱ながらIgA,IgG_<2a>、IgG_3と交叉性を示した。IgEクラスでは同種PCAでも検出できなかった。 1.エキノコックスEm(H)株に対するTaenia taeniaeformis Crb株の種間競合:実験動物化されたエゾヤチネズミを用いてT.taeniaeformis虫卵300個を経口投与し、2および3週後にエキノコックス虫卵300個を経口投与し、さらに4週後剖検して各々の群でのEm(H)によるシスト数を算定した。2週間隔ではEm(H)のみの感染群で35±150個に対してCrbのあとEm(H)を感染させた群では16.9±4.4個,3週間隔群で、それぞれ46±17.7個、25.7±11.1個であった。何れの群も有意に抑制する。以上、エキノコックスを含むテニア科条虫の中間宿主での競合の存在が、初めて確認され、種間競合を利用した生物防除の方向を提示することができた。
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