研究概要 |
従来蛋白質チロシンキナーゼの活性測定には基質としてセリン及びトレオニンを含まないチロシンを含んだぺプチド又はグルタミン酸とチロシンのペプチド重合体が用いられて来たが、チロシンキナーゼの生理的意義及びその活性調節機構の解明には天然基質を用いたこの酵素の活性測定法の開発の必要性を感じチュブリンを用いた活性測定法を開発した。 1.基質の調製;ウシ全脳よりチュブリンを抽出し、硫安分画,DEAE-Sephadex,ゲル濾過、【Mg^(2+)】とGTPによる重合,遠沈,透析により可溶化した。混入するセリン、トレオニンプロテインキナーゼは60℃,2分の緩和な熱処理で失活させた。 2.チュブリンのチロシン残基のリン酸化の測定;ATP-γ-【^(32)P】と粗酵素標品によりチュブリンのセリン,トレオニン,チロシンのいづれもがリン酸化される場合は反応をSDS,2-メルカプトエタノールを含む緩衝液を加え加熱して止め、反応液をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけて、リン酸化されたチュブリンを他の成分から分離した。染色したチュブリンバンドを切り取り、セレンコフ効果によりチュブリンに取り込まれた【^(32)P】を測定し、総リン酸量を算出した。次にこのゲルをアルカリで加熱し、遊離する【^(32)Pi】をリンモリブデン酸とし、イソブタノール-ベンゼン層に抽出し計測した。このアルカリ処理の条件設定はセリンのみがリン酸化されたチュブリンとチロシンだけがリン酸化されたチュブリンを用いて行った。アルカリ処理はセリン、トレオニンに結合したリン酸の方がチロシンに結合したリン酸より不安定である性質を利用したものでチロシンのリン酸の分別定量に用いた。純化された酵素でチロシンのみがリン酸化される場合はトリクロロ酢酸で皮応を止めリン酸化されたチュブリンを濾紙にスポットするか、グラスフィルターでこして【^(32)P】を測定する方法を確立した。
|