ヒト染色体の構造を理解するため、【○!1】染色体の分離技術、【○!2】大量分取技術の開発を行った。まず、シングルレーザー方式のセルソーターを用い、24種類のヒト染色体を10〜12の画分に分離することができた。これを利用し、正常細胞、転座染色体を含む細胞、ヒト-げっ歯類の雑種細胞から染色体画分を分取しDNAを抽出後、調べたいヒト遺伝子をプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行い、新たに単離された16個の遺伝子についてその染色体上の位置を決定した。次に装置をデュアルレーザー方式に改良し、各染色体の分解能を上げることを試みた。ヒト染色体試料はDNA中のAT塩基対に親和性を示すヘキスト33258(HO)とGC塩基対に親和性を示すクロモマイシンA3(CA)の2種類の蛍光色素で二重染色し、レーザー光の励起波長を351.1〜363.8nmと457.9nmに調整した。HOによる蛍光は420〜560nmを、CAによる蛍光は560nm以上を回収し、それぞれの蛍光強度を二次元に展開した結果、24種類のヒト染色体を21グループにまで分離することができた。このうち、第1、2、3、4、5、6、13、16、17、18、19、20、21、22、Y染色体の計15種類の染色体については完全に単離することが可能となった。さらに、ヒト細胞からの単離が困難な染色体に関しては、ヒト-ハムスターの雑種細胞から調製した染色体試料をデュアルレーザー方式セルソーターで解析することにより、完全に単離できることが示唆された。これにより24種類すべてのヒト染色体を単離する道が開けた。また、ソーティングの速度を上げる手段としてショ糖密度勾配遠心により大まかに分画した試料をソーティングの材料として使用した。各画分には染色体粗抽出液中に混在する細胞の破片や核の大部分が除去されているため、染色体試料をそのままセルソーターにかける場合に比べ、ソーティングに要する時間は1/5〜1/10に短縮できた。
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