研究概要 |
シリコン化合物表面の機能性膜の開発としてその応用研究のため、次のような研究を行った。まず、ラングミュア・ブロジェット法により顕微鏡用のカバーグラスの表面にリン脂質ハプテンを含んだ脂質単分子平面膜(または脂質二分子平面膜)を作成した。このような支持体上の平面膜は抗体やマクロファージの標的膜としての機能を備えており、免疫応答における分子認識や生体膜と細胞との相互作用の研究に利用できることを示した。また、リン脂質ハプテンのリン脂質とハプテン間の距離を間に入れるスペーサー分子の長さを変えることにより変更した試料を調製した。その結果、ハプテンに対する抗体の認識結合には適度な長さのスペーサー分子が必要であり、スペーサーが短か過ぎても長が過ぎても抗体の結合には不適切であることが明らかになった。更に、蛍光エネルギー移動法を使って、脂質二重層上のハプテンの存在様式を明らかにした。その結果、スペーサー分子が長くなると、一度膜から遠く離れたハプテン残基が再び膜に近ずき、そのため、抗体の認識結合能が低下することが分かった。同時に、免疫系の認識応答の機構についても検討を行った。そして、免疫系の認織応答の分子機構に関しても多くの新しい知見を得た。これらの成果の一部はProc,Natl,Acad,Sci,USA,83,1877(1986);Biochemistry,25,2582(1986);J.Biol Chem,261,16514(1986)等に公表した。また半導体素子の表面に機能性をもった膜を作成する手法を確立し、その物性について検討した。これは免疫センサーへの応用にも結びつくものと考えられる。
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