研究概要 |
コンピュータによる分子のモデリングは、今や分子の立体構造を問題とするあらゆる分野において、欠くことのできない技術の一つになりつつある。本研究は、大学の化学教育に用いるための分子モデリングシステムを開発することを目的とし、遂行にあたっては、すぐれた教育はすぐれた研究に立脚すること、すなわち、教育にも最新の研究成果を積極的に取り込むという立場をとった。とくに、分子モデリングシステムは、非常に進歩の著しい物質科学とコンピュータ科学の結合によって作られるものであるから、どちらの分野の発展も容易に取り込めるような、開放的かつ柔軟なシステムでなければならないことに最大限の考慮を払って、以下のようなシステムを構築した。 システムの中核に、高解像度カラービットマップディスプレイを備えたエンジニアリングワークステーション(DEC社製VAXII/GPX)を据え、オペレイティングシステムにはUNIX、ワークステーションのマルチウィンドウシステムにはX-windowを採用し、周辺機器として、パーソナルコンピュータ、レーザープリンタ、プロッタ、モデム等を接続した。さらに、広域ネットワークJUNETにも加入し、国際電子メイルも使用できる。この基本構成の上に、分子モデリングシステムを構築した。現在稼働中のプログラムは、分子力学計算(MM2/MMP2)、分子軌道計算(AMPA C)、X線結晶解析(SHELX-76,SHELXS-86,PATSE E)、構造表示(ORTEP,DRAW,DENSITY等)、NMRスペクトル解析(DAVINS,DNMR5)、分子モデリング(GRIMM,MOLDA4)等であり、これらの間のデータの引渡しも簡単にできる。さらにこれらに加えて、強力な文書処理機能も有しているので、教材や論文制作にも威力を発揮する。すなわち、本システムは化学の教育と研究を支援する統合的なシステムとなった。
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