研究概要 |
1.上肢動作の動作筋電図学的解析:健常被験者30名において、手指,手関節,肘関節各部の日常生活動作時の節活動について、24ch筋電計にて同時誘導し、整流後積分して記録した。その結果、各種動作での上肢節の協調的作用について明らかにすることができた。ことに上肢の全ての関節が互に関連して動いており、単独的動作はほとんどないことがわかった。 2.解剖屍体での上肢筋の作用に関する研究:1の研究結果より新知見が得られたものにつき、屍体での筋の牽引実験を行った。その結果、母指の外転動作に長掌筋が短母指屈筋と協調して作用する事が判明した。また、手内筋の作用についても新知見が得られており、現在研究中である。 3.麻痺上肢制御用刺激パターンの作成と上肢FES(機能的電気刺激)への応用:1と2の研究成果に基づき、各種上肢動作の刺激パターンを作成した。これを、NEC、PC8801mk【II】によるFES装置に入力し、四肢麻痺の上肢筋に経皮電極を介して与えた。その結果、筋電図解析時の諸動作をほぼ正確に再現することができた。そこで、頭の後屈と肩の上下動作を制御信号として患者に制御させた所、食事,整容などの日常生活動作を随意的に行うことができた。 4.携帯式FES装置の設計試作:PC-8801mk【II】でのFES装置の機能と同等の機能を持つ携帯式FES装置を2台試作した。大きさは、高さ5cm,縦20cm,横15cm程度で電池駆動式である。各患者の刺激データは、専用コンピュータで作成後EP-ROMに書込み、装置に組込めるようにした。これを、【C_(4〜5)】四肢麻痺に応用したが、基本的にPC-8801mk【II】のFES装置と同様の制御性が確保されていることが判明した。さらに検討を重ねて、より小型軽量で実用的な装置を開発することが62年度の研究目標である。
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