研究概要 |
移動物体としては非常に遅い地表面の伸縮を精密に測定し, 地震予知を行うために, 高速光変調器を試作し, 波長の異なった二波長のレーザーを用いた測距儀の開発を行った. これにより, 水平方向の地殻の時間変動を高精度に知ることができ, 今迄の技術と合せて地震予知を高い確率で行うことができる. 本研究により, 数10kmの距離を約10-7の精度で測定するレーザー測距システムの開発研究を行い, 精密測距のためには二波長のレーザー方式と変調方式とをかみ合わせることが有効であると考え, そこでこの測距儀で最も重要な高速光変調器としてリエントラント型共振器を用いたマイクロ波周波数3GH2の変調器の試作を行った. 変調器の特性を測定した結果, 高安定で, 高い効率が得られ, このマイクロ変調器の利用を示した二波長のレーザー測距儀の試作を行い, 基礎的な実験を行った. 更に, 二波長のレーザーの精密測距に於ける問題点として, 伝搬芳香の屈折率分布による二波長レーザーの速度の違い(速度補正), そして, 垂直方向の屈折率分布による二波長のレーザーの行路の曲りと不一致(幾何学的補正)があり, それぞれの誤差の評価を行なう必要がある. 速度補正にかんしては, 乾燥大気にたいしては完全に補正できるが, 水蒸気を含む大気にたいしては補正できない. 水蒸気圧1mbあたり距離にして約0.1ppmの誤差ができる. 幾何学的補正にかんしては, 10km程度の距離では約0.003ppmの誤差であってほとんど問題とならないが, 行路の曲りの大きさは距離の3乗に比例するために50kmの測距では約0.075ppmの誤差となる. 試作した高効率安定の高速光変調器による二波長のレーザー精密測距儀の開発と大気屈折率の解析により, 地震予知に大きく寄与するものと考える.
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