研究課題
本研究の遂行に必要な現実のパラメータを収集し、且つがん治療の都度それぞれの現場で使用されている線量確認計測における現下の精度状況を再確認するため、全国の主要がん治療施設に対するアンケート調査を行った。内容は、使用加速器の種類・製造社・型式、放射線種(電子またはX線)、エネルギー範囲、パルス巾、くり返し数、波形、大凡の線量率などと共に、線量測定器の種類、型式(電極構造、印加電圧等がわかる)などである。その結果、北海道、沖縄間の全国中から適切に抽出した72機関中の全機関からの積極的かつ好意的な回答協力を得ることができた。これらのデータ解析の結果、やはり当初の推測通りで、条件によっては±20%前後の線量計測誤差が懸念されるとともに、そのような問題が現場に於ては必ずしも認識されていない状況であることも判明した。大部分は電子(X線)リニアックで、パルス巾は2〜5μs、くり返しは300pps程度、線量率は2〜20rad/sの範囲が多く、イオン再結合損失により、線量検出器の電離電流収集効率は0.8程度にしかならぬ場合も予想できた。これに対し、J.W.Boagの理論を改良適用した山本の手法により、2種の電離箱の同時使用による信号比から収集効率をリアルタイムで補正して正しい線量を表示し保るソフトを開発し、これを電算機プログラムに組み込むテストを完了した。これは将来に於て現場オペレータが事前に測定器条件をインプットするのみで、測定誤差の大小範囲と線量の時間的積算状況を色別によるグラフ表示で直ちに確認できる手法確立の根拠を与えるものである。ただしこれには、イオン易動度および再結合係数の関係するu値の比が2種の電離箱に対して使用線量率範囲内で一定である条件が必要であり、この手法の厳密な有効性確認のためにはイオン易動度に関するなお複雑困難な解析が必要である。また線量分布不均等比の大きい電子線量測定に対しなお今後詳しい実験検討を要する。
すべて その他
すべて 文献書誌 (7件)