研究概要 |
妊娠依存性TPDMTー4(T4)乳癌を, 酵素処理による遊離細胞として, 移植すると容易に自律性癌へ進展する. ホルモン非依存性乳癌は化学療法の対象となッているので, サイクロフォスファミド(CP)による治療を反復し, その効果を追究した. CP治療により, 癌の増殖速度が上昇し, 多薬剤耐性を獲得し, 多種の染色体異常をもつ細胞の割合が増加した. 癌の進展では, 構成細胞のヘテロジェナイティーが進み, 治療を困難にしていることが示唆された. この悪性度上昇に半って, 外来性プロMMTVバンドが太くなったが, intー1,intー2など既知の20種のオンコジーンの増幅は認められなかった. 肺コロニー形成能を獲得していなかった. 酵素処理の反復により, T4乳癌から, さらに悪性化した肺コロニー形成能をもつ進展悪株を得た. これでは染色体異常がほとんどなかったが, 外来性プロMMTV情報の増加とintー2の増幅が認められた. ホルモンのプロモーター作用による進展亜株では, プロMMTV情報とオンコジーンに変化がなく, 染色体異常が目立った. 染色体異常も遺伝子機能異常を誘発すると考えられるので, ホルモン依存性乳癌の進展には, 遺伝子レベルでの変化が関与し, 癌のヘテロジェナイティーは遺伝子機能のヘテロジェナイティーに基づくと考えられる. 得られた亜株と親株T4の細胞間の相互作用を追究中であるが, T4細胞は進展度の低い亜株に対しては増殖抑制的に, そして高度展亜株に対しては促進的に作用するという結果を得つつある. 上皮細胞の増殖, 構築や相互作用で基底膜が重要であるということが指摘されている. 進展と基底膜の関係を追究する目的で, マウス腎臓よりIV型コラーゲンを精製し, 抗血清を作成し, 蛍光抗体法, 免疫組織化学法およびELISA法を確立した. ヒト乳腺病変に応用し, 悪性度が増すほど基底膜の障害がひどいことを見出している. T4乳癌モデルへ応用中である.
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