研究概要 |
樹状細胞は種々のT細胞依存性免疫応答の始動において強力なアクセサリー細胞あるいは抗原提示細胞として働くことが知られている. したがって, 抗腫瘍免疫応答でも癌細胞特異的T細胞の活性化において有効に機能することが期待される. 本研究では, BALB/c由来fibrosarcoma MethーAを用い, 量的変動ならびに抗原提示細胞としての機能を検討した. 1.腹腔に10^6の癌細胞を接種すると, 脾臓の肥大とそこから回収される細胞数にはかなりの増加が認められた. しかし, 脾臓当りの樹状細胞数には大きな変動は見られなかった. 2.正常マウスから調製した樹状細胞を癌細胞と共に足蹠に接種し, 癌細胞の増殖を足蹠の肥厚を指標に経時的に測定したところ, 樹状細胞を加えた効果は認められなかった. それのみでなく, 樹状細胞数の増加にともなってむしろ癌細胞の増殖が助長された. また, 腹腔に癌細胞ならびに樹状細胞を投与した場合においても, ほぼ同様の傾向がみられた. 一方, 担癌マウスから調製した樹状細胞を癌細胞と共に接種したグループでも, 正常マウスからの樹状細胞を移入したグループと同様に癌細胞の増殖は早められた. 3.次に, 正常マウスならびに担癌マウスから調製した樹状細胞をあらかじめ腹腔に移入しておいた後, 癌細胞を接種したところ, 前者では全く効果が認められなかったのに対して, 後者では明らかに樹状細胞移入の効果がみられた. ただし, 癌細胞に対する増殖抑制効果は少数の樹状細胞を接種しておいたグループに限られ, 多数の樹状細胞を接種したグループでは返って腫瘍の増殖が助長されてしまった. 以上の結果は, 担癌マウスの樹状細胞上にはT細胞を活性化し得る形で腫瘍抗原が存在しているが, その様な樹状細胞も過剰であると逆効果である事を示している.
|