研究概要 |
われわれは、マウスの同系腫瘍に対する細胞障害性T細胞(CTL)の誘導から活性発現の解析を行って来た。その結果、同系腫瘍に対するCTLには少なくとも二種類のCTLサブセットが存在することを明らかにした。その一つは、誘導活性化にインタ-ロイキン2(ILー2)、あるいはL3T4陽性T細胞の存在を必要とするヘルパ-T細胞依存性CTLであり、他の一つはヘルパ-T細胞非依存性CTLである。これら異なる二つのCTLサブセットの生物学的意義、役割を示すと思われる実験デ-タとして、腫瘍細胞が血球由来の細胞である場合、このような同系腫瘍に対するCTL応答にはヘルパ-T細胞依存性CTLが対応するのに対して、それ以外の固型腫瘍に対するCTL応答はヘルパ-T細胞非依存性CTLが対応していることが明らかにされた。 これら二つの異なるCTLサブセットの性状について解析した結果、BALB/c由来のイディオタイプ陽性形質細胞腫MOPC104EやA/J由来のT細胞リンパ腫L1117に対するCTL応答はL3T4陽性T細胞の存在下で誘導活性化されるCTLであり、その細胞表面のphenotypeは、Thyー1^+,Lytー1^+,2^+である。これに対して、A/J由来のメチルコラントレイン誘発肉腫S1509aやB10・D2マウス由来のラウス肉腫ウイルス誘発肉腫に対する同系CTL応答は、L3T4陽性T細胞の存在なしに誘導活性化されるCTLであり、その細胞表面のphenotypeはThyー1^+,Lytー1^+,2^+である。このヘルパ-T細胞非依存性CTLの誘導活性化にはマクロファ-ジ様アクセサリ-細胞の存在が必須であり、このアクセサリ-機能は、アクセサリ-細胞から遊離される可溶性因子(キラ-T細胞活性化因子,KAF)によって代行される。これらのCTL応答はHー2D領域の遺伝子によって支配されているが、この遺伝子はアクセサリ-細胞から遊離されるKAFの産生を制御することによってCTL応答を調節しているのではないことが明らかになった。
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