研究概要 |
ATLの原因ウイルスHTLVーIの母児間伝達の解明を目的として, 妊婦キャリアのスクリーニング,キャリアへの告知,任意による人工栄養,小児の追跡調査を行っている. 昭和62年度は8月より対象地域を長崎県全域に広げた. 昭和62年度に明らかとなったのは, 積極的に人工栄養を行った児では生後1年で0/47,2年で0/8例がキャリアとなり, (1)子宮内感染・同産期感染の頻度はあってにしてもまれであることが実証された. (2)母乳を与えなければ感染の頻度は極めて少なくなることが証明された. 昭和62年後半に開始した県下全域のスクリーニングでは, 母乳以外の感染の有無とその頻度を明らかにするのが目的である. 一方この問題が注目され県内医療レベルを同一水準に保つ必要性があった(患者則がスクリーニングを行ってくれる産婦人科医を選択しはじめた). 一方前年度の研究で判明した"抗原検出できる母親は感染源となりやすい"傾向を一歩進め, "抗体価の高い母親は感染源となりやすい"ことが判明した. この結果は検査感度限界付近の抗体価の低い母親を人工栄養グループに無理してとり込む必要がないことを示しており, スクリーニングの実施上有益であった. 現在のところ告知による重大問題は発生していない.
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