研究概要 |
キラ-細胞による抗腫瘍効果亢進を期待して投与が試みられているILー2の生体内での機能を検討する目的で、ILー2産生トランスジェニックマウスの作製を試みた。マウス受精卵に導入するDNAとしてはヒトジェノミックILー2遺伝子(gILー2)とプロモ-タ-部位をマウスのメタロチオネインのそれと交換したもの(MTgILー2)を用いた。ヒトILー2遺伝子を使用したのは、培養系でヒトILー2がマウスのキラ-活性を誘導し得ること及びマウスの内因性ILー2とを識別するためである。2種類のDNAをB_6マウス受精卵に導入したところ、別個に得られたgILー2仔マウス37匹のうち4匹がトランスジェニックであることが尾のDNAを使用したSouthern blot解析の結果明らかとなった。一方MIgILー2の方は、30中8匹がトランスジェニックであった。これら仔マウスを支配するため成長を待ったところ、2週令より運動失調症状が出現し成長も遅れた。また妊婦トランスジェニックマウスがなかなか得られないので、一部のトランスジェニックマウスは体外受精を試み、他は病理組織学的検索に供した。その結果成熟トランスジェニックマウスの小脳にはリンパ球,単球,好中球を主体とした炎症細胞の浸潤が著明で小脳実質構造はほとんど保たれていなかった。その他の臓器に変化は認められなかった。体外受精で得られたF_1トランスジェニックマウスを経時的に検索すると、小脳の変化は生後4日目のくも膜下腔におけるリンパ球集簇に始まり、以後実質的に単球と共に浸潤していった。こられリンパ球はT及びB細胞でILー2レセプタ-陽性細胞も検出された。以上の結果は、小脳のリンパ球浸潤による小脳変化は導入されたヒトILー2遺伝子により誘導されたことを示唆する。交配によるF_1マウスの収得が困難であったため検索が遅れたが、現在トランスジェニックマウス中のヒトILー2を測定中である。
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