研究概要 |
本年度の研究計画に対応し以下の実績を得た. 1.耐性癌に対するモノクローナル抗体MRKー16, 17, 18, 20の抗原の同定と精製. MRKー16, 17の認識する抗原はPーglycoproteinである. Pーglycoproteinは抗体を用いたimmunoaffinity chromatographyで精製に成功した. その結果, PーglycoproteinはATPase活性をもつことが明らかとなった. 抗癌剤膜輸送にATPの関与が考えられ興味深い. MRKー18, 20の認識する抗原はそれぞれ分子量8.5万, 30万の膜タンパク質である. そのいずれの機能も現在不明である. 2.Pーglycoproteinのリン酸化反応. Pーglycoproteinはbasalにもリン酸化された膜タンパクである. そのリン酸化はカルシウム拮抗薬, カルモジュリン阻害剤によって亢進する. またホルボルエステルであるPMAによって特に顕著にリン酸化が亢進した. ペプタイドを分析すると, 前二者によるリン酸化部位と, PMAによるリン酸化の部位は異る. PMAによるリン酸化にはCーkinaseが関与することが考えられる. Cーkinaseによるリン酸化はPーglycoproteinの機能, 例えば抗癌剤の膜輸送や耐性細胞の増殖, に関与する可能性が考えられ, 現在解析中である. 3.耐性遺伝子のクローニング. アドリアマイシン耐性のK562細胞のDNAをマウスLー細胞にトランスフェクトし, トランスフェクタントよりMDAを分離, 制限酵素で切断後, ヒト特異的配列Aluでひろいあげることで, 耐性遺伝子断片λKa2.6のクローニングに成功した. λKa2.6は各種ヒト耐性細胞に増幅して存在する. またその認識するmRNAは4.5kbであり, そのcDNAの塩基配列からPーglycoprotein の遺伝子であることが明らかとなった.
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