研究概要 |
1.抗ガングリオシド抗体(202)の樹立 ヒトメラノーマ細胞株(M14)をBalb/cマウスに免疫して得られた(UCLA医学部入江礼子教授との共同研究). IgMクラスであった. 2.202抗体のエピトープの同定 M14細胞の202抗原は熱処理,トリプシン処理にて安定な性質を示したので糖脂質が考えられた. 抗原活性はM14細胞より抽出したガングリオシド分画のみに検出され中性糖脂質分画には検出されなかった. このガングリオシドをTLCで展開しその抗原活性を免疫染色法と免疫粘着阻止テストで検索したところ,活性はモノシアロガングリオシドすなわちGM3とGM2に一致して検出された. ジシアロガングリオシドGD_3,GD_2には全く認められなかった. 次に糖脂質標準品22種類を用いてその反応性をELISAと免疫粘着阻止テストで調べた. 反応した糖脂質は9種でいずれも末端にSiaα2→3Galの2糖を持つモノシアロガングリオシドであり, GM4が一番強い反応性を示した. シアル酸はNーアセチル型とNーグリコリル型双方同程度に反応することが判明した. 尚,202抗体はM14細胞のNPー40可溶化糖蛋白質画分とは免疫沈降反応を示さなかった. 3.202抗体の各種ヒト腫瘍細胞との反応性 種々のヒト腫瘍細胞に対する反応性を免疫粘着テストにて調べた. メラノーマやその他の腫瘍細胞株とは強く反応したが, 正常組織(皮膚,肝,腎,筋肉,末梢血球等)とは全く反応しなかった. 4.202抗体の細胞障害作用の検討 IgM抗体である202はヒト血清在存下M14細胞に対して非常に強い補体依存性細胞障害作用を有することが判明した. すなわち抗体濃度100ng/mlで1時間以内に約80%以上の細胞が障害を受けた. 一方抗体依存性細胞介在性細胞障害作用は全く認められなかった. 今後はヌードマウスに移植したヒトメラノーマ細胞等に対する抗腫瘍効果の検討が必要である. 最終的には臨床実験治療が不可欠となる.
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