研究概要 |
第一次, 第二次の調査結果を考慮しながら, ブラジル南西部のマットグロッソ高原からアクレ州にいたる地域を中心に綿密な比較農業生態学的調査を行い, 次の事項の解明に資する. 1)自然立地条件の相違による土壌・植物・作物栄養状態の相違およびそれをもたらす原因, 2)人為的条件(農地造成, 利用・改良・管理法等)の相違による土壌, 植物・作物栄養状態の相違およびそれらをもたらす原因, 3)自然立地および人為的条件の組合わせによる土壌・植生の相互関係の変遷, 4)以上に基づく, 赤色土地帯の土地生産力評価, 各種利用方式(森林, 焼畑, 常畑, 自然草地, 改良草地, 水田, 樹園地等)の評価と位置づけ. 1.次の9調査地区, (1)ブラジル高原北部, (2)ブラジリア周辺, (3)ゴイアニア丘陵, (4)マットグロッソ高原, (5)ブラジル高原南部, (6)パンタナル湿原, (7)パレシス山地, (8)ロンドニア北部, (9)アクレ洪積台地の38ケ所で土壌・植生・水質調査を行い, それぞれ試料を採取した. (1), (2), (4), (5), (7)は風化の進んだオキシソルからなり, セラード植生が優占する. (3), (5)の一部, (8)は母材の変化が著しく, 種々の土壌・植生が混在している. (6)は湿生の土壌・植生からなり, 一部にアルカリ土壌が分布する. (9)は粘土質な湖成(?)堆積物からなる. (8), (9)にかけては赤黄色ポドゾルが主要な土壌型であり, 森林植生である. セラード植生地帯の水質はきわめて貧栄養であるが, セラード・森林遷移地帯には比較的高塩基の河川も分布している. 2.セラードでは, 低pH・高塩基の土壌であるにもかかわらず, 石灰・リン酸資材の投入とN・P・Kおよび微量要素施与による作物栽培が導入され, ダイズを中心として大規模な高インプット作物栽培が急激に進んでいる. 現在のところ収量もかなり高収レベルである. 今後の生産性の維持および畜産と作物栽培との得失について解析する必要がある. 3.熱帯降雨林地帯では森林を伐採・焼却し, 草地あるいは農地として小規模な低インプットによる利用が進んでいる. 土壌は肥沃とされ, 例えば草地における牛の餌育頭数はセラードに比べて数倍とされている. しかしながら, 無肥料栽培が継続されている結果, 場所によっては作物収量が極度に低下している所もあり, 近い将来施肥が必要になると考えられる. なお, 永年作物(コーヒー・カカオ・ゴム)が推奨されているが, これらに対しても効率的施肥技術を確立することは必須である.
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