研究概要 |
アメリカ合衆国太平洋岸, カリフォルニア州北部の海岸山脈, クラマス山地, グレートバレー, シェラネバダ山脈, さらにネバダ州からニタ州にかけてのグレートベズンなどを構成する衝突・付加帯の各テレーン中の地層, とくにチャート, 珪質泥岩からコノドントや放散虫などを抽出して化石層位学的に詳細に研究する. また石灰岩中のフズリナ・サンゴ・コノドントは化石層位学的研究とともに古生物地理的に検討する. これらの調査研究によって各テレーンの形成時期, 形成機構を明らかに, 日本列島を構成する同一起源とみられるテレーンと比較研究する太平洋両岸の地史, テレーンの形成史を微化石を用いてグローバルな視点から考察するところに本研究の主目的がある. 調査研究の内容の項で述べたように, 大別して4地域で野外調査を行い研究試料の収集を行うとともに, 層序や地質構造など野外での研究を行った. なお現地での日程やコースは, 予期せぬ異常気象や現地案内者, 調査協力者の都合もあって, 当初の計画を多少変更せざるを得なかったが, 結果的にはそのほとんどを網羅することができた. 以下各地域ごとに得られた実績の概要を述べるが, 膨大な微化石試料, 層序や地質構造などを解明するための岩石試料の室内での研究がやっと手についたばかりであり, 現時点では野外での観察と研究が主体になる. 1)カリフォルニア州北部のクラマス山地では, 多くの地点から微化石を検出し試料を採集したので, 室内作業が進展するとかなりの新事実が得られるものと思われる. また, マクロード石灰岩からはフズリナ, サンゴ化石を多数採集したが, これらのなかには新産地が含まれていて, 古生物地理的研究の好試料をとなるであろう. グレートバレーからは白亜紀の放散虫化石を採集したが, これらはわが国のそれと比較研究の貴重な資料を提供するものと思われる. 2)グレートベイズンでは予期した以上の成果が得られた. とくに, ネバダ州のバットル山地ではこれまでアメリカの学者達が苦労して推定していた地層の中から多くの地点で, 新たに微化石を検出することに成功し, 案内をしてくれたアメリカ合衆国地質調査所やスタンフォード大学の学者, 現地の鉱山会社の技師らはわれわれの成果に驚嘆した. 3)シェラネバダ山脈はその北部と南部を横断しただけであるか, , かなりの岩石試料を得ることができた. これらの成果は今後の室内作業の結果が待たれる. 4)海岸山脈ではフランシスカン層群の中の珪質岩, 泥質岩から多くの放散虫化石を採集することができた. これらの多くは白亜紀のものであるが, もともとこの地層は太平洋を隔てて, 我が国の同一時代のものと大変類似する地層であり, 比較研究の好試料で今後の室内研究によって多くの成果が期待される.
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