研究概要 |
ブラジル, ミナスジェライス州のアルカリ岩, カーボナタイト地域の岩体に見られる稀土類元素や, Ra,U,Thなどの重元素を含む鉱物の生成環境の実地調査, 及び, 採集した鉱物試料の鉱物化学的な解析, それらの結果についての議論をサンパウロ大学の研究者と共同で行ない, (1)稀土類元素, 放射性元素などの鉱物化学的振舞, 微細組織や結晶構造との関連を周辺の地質との関連に於いて明らかにすること, (2)放射性元素の固定化としてモデルとなる鉱物の基礎的研究, が主たる目的である. 本海外学術調査では, 代表者及び日本側分担者の計4名が2隊に分れてブラジルを訪れ, サンパウロ大学側の分担者と共同でPocos de Caldas地域の調査, および, 試料標本と研究資料の収集を行なった. その後, 日本側研究者は発送試・資料の到着と同時にそれらの整理と研究, 分析を開始している. 〈調査地域と成果の概要〉:実施した調査研究地域はブラジルのサンパウロ州とミナスジェライス州との境にあるポッソス・ド・カルダス市付近, および, その周辺数百キロメートル地点のアルカリ貫入岩体及びカーボナタイト地域で, サンパウロ市より北へ約200〜300Kmの地点である. 主な調査研究事項はアルカリ岩, カーボナタイトなどの岩石の他, これらに関連して見られる鉱物の産状であり, 収集試・資料は大別すると, (1)種々のアルカリ貫入岩, (2)多種多様なカーボナタイト(carbonatite), (3)稀土類元素を固溶あるいはこれと関係した産状を呈するペロブスカイト(perovskite), アバタイト(apatite), アナターゼ(anatase), バライト(barite), パイロクロア(pyrochlore), 等の鉱物群, (4)放射性元素を含む鉱物, メタミクト鉱物. (5)各機関より提供を受けたボーリングコア, (6)放射性元素, 稀土類元素の移動過程, またそれらを含む岩石, 鉱物の風化過程を調査する為に系統的に収集した表〜中層土, (7)ポッソス・ド・カルダス近隣のペグマタイト産の鉱物, (8)地質図, 地形図, 資源調査図, ランドサット調査写真, 研究文献, などである. なお, 本年度は本課題で調査を行なった最初の年であるので, 将来の研究に備えて, 試・資料の整理保管・記載が中心課題であり, 学協会誌等への出版は研究の総括の過程で行なう予定である. しかし, 一部試料については, 光学顕微鏡, 電子顕微鏡, X線分析装置などでの観察・分析の為の薄片・研磨試料の作成および分析を行ない, 昭和63年6月の日本鉱物学会で発表の予定である. 〈研究の展開・計画〉:研究の総括で得られる収集試料分析・解析の成果を生かして, 将来は, 本年行なった実地調査地域と収集対象試料をより的確かつ効果的にすると同時に, 本年度に調査出来なかったポッソス・ド・カルダスより数百キロメートル北の地域およびサンパウロより数百キロメートル南にあるアルカリ岩, カーボナタイト地域についても調査を拡張し, 目的鉱物の産状の地域差を含めた研究に発展させたい.
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