研究分担者 |
竹宮 聖隆 愛媛大学, 医学部, 助手
白石 稔 愛媛大学, 医学部, 助教授
三木 吉治 愛媛大学, 医学部, 教授 (30028336)
廣田 満 国立がんセンター研究所, がん予防研究部, 研究員
坂井 進一郎 千葉大学, 薬学部, 教授 (20009161)
松島 泰次郎 東京大学, 医科学研究所・癌生物学研究部, 教授 (10012759)
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研究概要 |
1)タイ国の癌の臓器別発生率統計によると, 日本とは明らかに異なるパターンを示す. 例えば, 日本では非常に少ない皮膚癌がタイ国では第7位を占める. タイ国では日本と異なる何らかの環境因子が発癌に関与していると理解される. 特に, タイ国の番傘村の油, 南洋桐油には発癌プロモーターが含まれているので, これら発癌プロモーターが人癌の発生に関与しているかを調査研究する. 2)南洋桐油に含まれる発癌プロモーターの構造決定を完成する. 1.タイ国南洋桐油に含まれる新しい発癌プロモーターを分離し, 構造を決定した. 12ーdeoxyー16ーhydroxyphorbol esterified with the dicarboxylic acid 4'ー[12',14'ーbutadienyl]ー6'[16',18',20'ーnonatrienyl]ーbicyclo[3,1,0]hexaneー2'[carboxylic acid]ー3'[8'ーbutenoic acidー10']と命名した. 次年度には絶対構造の決定を行う. 2.チェンマイ地区の番傘村では, 発癌プロモーターを含む桐油を長年傘の防水に使用している. チェンマイ地区の皮膚癌の疫学調査を行うと共に, タイ国の癌統計の資料から, タイ国の地方別癌発癌率の比較, 発生部位, 患者の分布状況などを検討した. 皮膚悪性腫瘍患者について地方別にみると, 最も多いのはMueng地区の20例, 25.5%, 次が番傘村があるSan kampang地区の9例, 11.4%であった. 本調査に際して面接した番傘従業者はいずれも10年〜40年以上の長期にわたり作業を従事したにもかかわらず, 皮膚疾患や前癌状態としての慢性皮膚炎症は認められなかった. 環境発癌プロモーターがヒトの皮膚癌の原因となるか, もっと検討を続ける必要がある. 3.タイ国産ウルシ科植物のウルシ油について成分を単離した. 既知3ー置換並びに4ー置換アルキルカテコール類等数種類を得, 発赤テストを行った. 不飽和度の高いアルキル置換体が弱いながら活性を示したが, 発癌プロモーター活性は弱いと思われた. ツクバネウルシの果実には新規化合物が存在するかも知れない. 4.チェンマイ地方の市場で購入したコショウ, 15種類についてAmes tesrを行った. いずれも突然変異原性は陰性であった. コショウが, タイ国人の胃癌の原因であるとの考察は否定できた.
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