研究概要 |
1.本研究は, 昭和61年度にマレーシアで実施した調査に基づき, 昭和62年度に調査結果の総括を行い, 研究成果報告書を作成した1連の研究プロセスによるものである. ここでは, 特に, マレーシアFELDAによる大規模農業と土地開発に基づく, 新しい居住地域の入植者の居住環境と, 住民の行動, 施設の整備状況などの調査から, 都市計画学, 地域計画学, 環境医学, 衛生学, 社会学および経済学などの様々な分析アプローチを道して, 総合的な居住環境評価を行ったものである. 2.本研究の具体的な項目とその研究成果をあげると次のようになる. (1)FELDA開発地域における生活基盤と公共施設の効用水準に関する調査 この調査は, 主として, 入植地における, 施設状況調査, 入植者の環境施設に対する満足度調査, およびジュエンカトライアングル地域の交通量調査によって, 居住環境を多角的に, また, 総合的に分析したものである. その結果, 施設については, 教育, 商業, 上水, 宗教などに関わる基盤的施設については, いずれの地区においても, 施設が充実していること, それに伴って, 満足度も高いことが明かとなった. しかしながら, 電力や, 電話などの通信施設, また, 文化施設などより高度な施設については地区の差異が大きく, それに伴って, 満足度にも差異が生じていることがわかった. さらに, 地区内で利用できないものについては, 周辺の町で調達している場合が多く, それに伴って, 交通も発生していることが推定できた. (2)FELDA開発地域の居住者の社会的適用の検討 ここでは, 開発における政策目的, 計画, 実施, 入植および, コミュニティ形成といった課程の中で, 社会人口的要素, 社会構造, 文化構造, 経済構造などがどのような役割を果たすかを, 入植者に対するインタビュー調査によって明らかにした. その結果, 入植者の, 移住を促す要因が, 以前の職業に対する満足の程度や, 収入の機会などに依存し, また, 土地を持つこと, 収入の増加などに強い希望があることがわかった. また, 現在の満足状態は, 施設に対するものと共に, 近所づきあいや, 政府のサービスなどにも高いウエイトがあることがわかった. (3)居住者の医療と衛生に関する選好性の検討 ここでは, 衛生環境に調査と実際のFELDA居住地区の医療条件と日常の飲料水と河川の水質について調査を実施した. その結果, 上水については, 衛生学的に水質がきわめて良好であることが確かめられた. さらに, 入植者のインタビューによって, 水を煮沸して飲んでいることからも, それによる病気の発生は, 少ないといえることがわかった. 便所に関しては, 3種類あることがわかったが, ほとんど清潔で, 蝿などの発生もなかった. また衛生教育も熱心で, 衛生学的環境も, 医療環境もよく整備されていることがわかった. (4)FELDA計画におけるジェンカトライアングル地域の居住者の空間的選考性の把握 ここでは, 主として, 入植者の空間的意識構造の調査によって, メンタルマップを作成し, その行動性との関連性を調査するものである. その結果, メンタルマップ作成のための要素として, 個人的経験, 環境と社会的行動があげられた.
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