研究分担者 |
松島 義章 神奈川県立博物館, 専門学芸員 (20124521)
宮田 隆夫 神戸大学, 教養部, 助教授 (00107989)
石井 輝秋 東京大学, 海洋研究所, 助手 (80111582)
松本 英二 名古屋大学, 水圏科学研究所, 教授 (30199864)
井田 喜明 東京大学, 地震研究所, 教授 (30013535)
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研究概要 |
本研究の目的は, 中部太平洋の海洋島の地形・地質及び古生物学的調査により,完新世の海面変動の地域的な特徴を明らかにし,地球物理学的な解析と比較しながら,マントルの粘性分布を決定することである. 本年度は昨年度に現地調査を行なったマリアナ,東カロリン,マーシャル,ハワイ,フィジー,および西サモア諸島の島々において採取に試料の分析と放射性炭素年代測定にもとづき,いくつかの島における完新世の海面変動を復元した. その結果,中部太平洋の多くの島で,約4000ー3000年前の海面が現在より1ー2m高かったことを示す事実が発見された. すなわち,マリアナ諸島のロタ島・グァム島には完新世の離水サンゴ礁が分布し,5000ー3000年前当時の海面が現海面より高かったこと,約3000年前の離水礁の形成後にはその海側に現成礁が形成されつつあること;ハワイ諸島カウアイ島では完新世の海成層の頂面が海抜約1.3m付近により,約4000年前には現在より海面が高かったこと;フィジー諸島ビチレブ島南部の沖積低地における海成層の分布高度とその年代から,約4000ー2600年前には現在より約1m高い海面が存在したこと;フィジー諸島バヌアレブ島の離水ノッチの高さと離水サンゴの年代から約4000年前に現在より高い海面が存在したことなどである. 地球物理学的なモデル計算によれば,完新世の相対的高海面が中部太平洋海域に存在し,その高海面は小さい島では約4000年前に,大きな島では約6000年前に生ずることが予測されている. 中部太平洋の各地の島々での観測結果はこの予測と定性的には一致していることが明らかとなった. しかし定量的には理論値と観測値の間に若干のずれもあり,完新世の相対的高海面を生ずるのにテクトニクスがどの様な役割をはたしているかを吟味することが必要である.
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