研究概要 |
昭和61年度においては, 表記課題に関する現地での実態調査を実施した. 調査は, 主として現地に進出している日系企業を訪問し, 面接調査を行う方式を採り, 時間的制約により訪問が不可能な企業を主対象とするアンケート調査を行った. また, 現地調査日程の半ばにおいてブラジル政府機関(商工省及び中央銀行)を訪問し現地政府の立場からみた日系企業についての意見聴取を行った. 最後に, 日程の最終段階において現地大学(サンパウロ大学)において現地研究者と共同研究会を開催し表記課題についての討議を行った. 現地における実態調査の結果, ブラジルにおける日系企業の性格, 及びブラジル経済に対する貢献将来への期待, 等が明確にされた. (1)日本の対外直接投資総額の中では対ブラジル直接投資は上位にランクされるが, ブラジルにおいては既存の民族資本及び欧米資本による各種産業が地盤を築いており, 日系企業が参入する余地は大きくない. ただし, 政府が経済開発を目的として設定したプロジェクトを中心とする部分に対しては, 日本の対ブラジル経済協力を基盤として大きく参入している. ただ, 日系企業が民間ベースで進出したものについても, 家電産業, 繊維産業, 等においては相当な成果を上げているものもある. (2)日系企業それ自体が抱える問題としては, 現地での経済情勢に如何に対応するかという経営政策の運営は当然であるが, それ以上に日本的経営方式を如何に現地に適応させるか, またはそれを企業の国際化の潮流の中で如何に改善するか, を充分に考えなければならない. これは, ブラジルにおける日系企業だけの問題でなく, 世界各国に進出している日系企業全体の問題でもある. (3)今後の問題としては, 日系企業はブラジル経済の基盤である農業を重視し, 農業関連産業の開発に重点を置くことがブラジル経済への大きな貢献となることが考えられる. またブラジル政府は, 今後のブラジル産業構造をハイテク産業の方向に進めたい意向を持ち, この分野での日系企業の進出を希望しているようであるが, これに関しては日本経済の今後の問題とも大きく関わってくるので, その可否を直ちに決定することは困難と考えられる. (4)具体的な現地での実態調査と平行して, ブラジルにおける日系企業の事業活動に関する情報収集を行った. これは, 神戸大学経済経営研究所附属経営分析文献センターで作成中の「日中多国籍企業データベース」に収録するための基礎資料となるものである. このような調査報告に基づいて, 昭和62年度には, この調査研究の総括として, ブラジルに進出している主要企業のブラジル担当者等の出席を要請し, 神戸大学において「総括のためのコンフェレンス」を開催した. ここでは, 主として進出企業の本社側の立場からブラジルにおける関連企業についての意見聴取を行った. これら昭和61・62年度にわたる海外学術研究の研究成果については, 「報告書」を作成し, 提出する.
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