研究概要 |
昭和61年8月ー9月にかけての約一カ月間, サウスパシフィック大学(スバ市)の海洋資源研究所長U.ラジ教授ほかとの共同研究として実施した現地調査, および昭和62年度に実施した室内研究の成果は, 既に本研究プロジェクトの調査総括として英文で印刷公表されている(Hayasaka ed.1988,). 以下に, 調査研究の実施経過と, 報告された研究成果の概要につして述べる. 昭和61年度の現地調査は, 昭和58年度に次ぐ第二次調査であり, その主目的を, 精密環境調査とした. 現地調査に伴う作業項目としては, (1)海洋学的観測(海底地形, 底質, 水温, ph, DO等), (2)トラップによるオウムガい及び共存生物採取, (3)採集生物の同定・計測・記載(4)採集したオウムガイの発生生理学的検討, (6)トロリーング及びドレッジングによる底生生物の無作為的採集, (7)海底における水中スティルカメラによる生態写真撮影を計画・実施した. 昭和62年度の室内研究(調査総括)に際しては, まづ研究グループ全員による打ち合せを行ない, 研究分担項目を決めた. その後, 昭和62年夏に鹿児島において研究打ち合せ会議を行ない, 成果の取り纏め, 印刷・公表の計画を立案し, 各人の研究を更に継続した結果, ほぼ予定どうりの日程で成果を刊行することができた. 本研究の成果は次の7項目にまとめられている. (1)調査対象海域(フィジー国, ビティ・レブ島のスバ市沖と, オバラウ島沖)におけるオウムガイ自生海域の海洋環境条件ーとくに海底地形の詳細について. (2)オウムガイの生殖器官の生理学的研究. (3)オウムガイ殻にみられる付着生物. (4)オウムガイ殻の破損状況. (5)オウムガイ自生海域における底生有孔虫群集. (6)餌をとりまく生物群(オウムガイとその共存生物)の水中スティルカメラによる行動観察と生態解析. 成果の詳細は既に報告ずみであるが, 今回得られた新知見は次のとうりである. (1)第一次調査結果から予測されていたオウムガイの生息様式ーある地域に一様にでなく, パッチ状に分布し, とくに密集する場所は半永久的に一定しているということを確認し, 高密度地点の微地形的な特長を把握することができた. オウムガイの生息環境が, いずれの地域でも, 海岸線から直接深海底に至る急峻な海底地形の200ー数100メートル深さのところに限られているという事実は, 従来, オウムガイの生活史との関連で重要視されてきたが, 海底地形の詳細とオウムガイの生息様式との関係については不明であった. スバ市沖合海域という限られた場所ではあるが, 今回得られた知見は重要である. (2)オバラウ島沖の海域において, 予備的な調査をおこなった結果, スバ市海域と類似の環境条件にあること, 同程度のオウムガイ生息密度のあることなどが明らかになった. (3)従来実施してきたトラップによる調査では, 餌で誘引するという作為的条件をともなうので, 採集された生物標本は, 自然集団を代表するものとはいえない. そのような欠点を補う為に, 今回は底曳トロールとドレッジによる生物採集を試みた. 起状のはげしい珊瑚礁の外側の外側斜面ではあるが, 上記の環境調査で明らかにされた微地形に注意することによって, トロール, ドレッジに成功し, 無作為的試料をうることができた. (4)スバ, オバラウの両地域において行なった水中撮影で得られた266枚の写真をもとに, オウムガイその他の生物の出現順序・出現時間帯・索餌行動・摂餌行動などを解析した. オウムガイは, しばしば予想以上に長い時間, 摂餌行動をとり続けることがあり, 連続写真による解析の結果, 最長11時間にたっするものが認められた.
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