研究概要 |
代表者堀越と碩学裘教授との研究領域が一致している事から両大学間で協定が締結された60年度より, 制癌剤を中心とした新しいDrug Delivery Systemの開発と臨床応用を共同研究の目的とした. 今年度は, 温度感受性リポソームを用いて高分子薬物の放出制御およびその臨床への応用について検討した. 以下概要を示す. [目的] リポソームは相転移温度(Tc)近傍で著しくバリヤー能の低下することが知られている. 本研究では, 基本的にはリポソームのこの特性を利用して, 高分子薬物の局所放出を体外から制御し得る温度感受性リポソームの作製を目的とする. [方法] リポソーム構成脂質としてDPPC(Tc=41.5℃),低分子薬物モデルとしてcalsein(CAL),高分子薬物モデルとしてinulin(IN),dextran(DX)及びurokinase(UK)を用いた. リポリームは逆相蒸発法(REV),界面活性剤除去法(LUV)及び超音波法(SUV)により調製した. 加温による生体内放出制御実験は, ウレタン麻酔下, Wister系雄性ラットの石下肢を先端から5cm,43℃水浴中に浸して行った. CAL濃度は分光蛍光光度計,UK活性は合成蛍光基質法,IN及びDXはラジオトレーサー法により測定した. [結果・考察]DPPCリポソームからの薬物放出は, いずれの薬物もDPPCのTc近傍で急上昇して, 温度依存性が認められ, 特にREVは顕著であった. 放出のパターンはいずれの場合も類似し,放出量は時間と共に増加して一定値に達した. ヒト血漿の添加でREV・LUVのいずれも放出時間,放出率,温度感受性が増強された. REV封入UKのラットにおける血中滞在時間はfreeに比べ延長され,血中濃度は投与15分後でfreeの10倍強となったが, ラット右下肢加温状態では同6倍となり, 加温による生体内でのUK放出の促進が確認された. 以上より温度感受性リポソームを用いることにより, 外部からの高分子薬物の放出制御が可能となることが示唆された.
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