研究概要 |
トリチウムの体内に取り込まれるまでの移行経路および体内代謝を検討. 1.降水中のトリチウム濃度:1987年の各月の平均値は30.8pCi/lとなり, 1985年の40.1pCi/l,1986年の37.2pCi/lに比べ低値を示した. この累積降下量(1〜11月)は38.5mCi/km^2で, 1986年(1ー11月)の45.7mCi/km^2と比べ減少している. 1985年以降の月間降下量では6月の値がいずれも最低を示したが, 季節変動は明らかでない. 2.トリチウム水の体内挙動:SD系ラットバチリチウム水185KBq/g・体重の割合で1回経口投与し, 脱血致死(全身潅流法)させた後, 主要臓器を摘出し, 超遠心法により分画し, 細胞核および細胞内小器官の組識結合型トリチウム(TBT)濃度を経時的に観察した. その結果, 各臓器内の各分画ともTBT濃度のピークは, 投与後1〜4日の間と比較的早い時期に現われた. 肝・腎におけるTBTの初期濃度はミトコンドリア, ミクロソームにおいて高く,核,サイトゾールで低い. しかし,投与後時間の経過とともに核, ミトコンドリア・ミクロソーム間の濃度差は少なくなっている. 脳TBTの初期濃度も肝・腎と同様にミトコンドリア,ミクロソームにおいて高く,核,サイトゾールが低い. 各分画の体内半減期は代謝回転の小さい脳で長く, 精巣で短い. 3.トリチウム水投与母親マウスと胎仔における骨髄小核の発現:ICR系マウスを交尾させた後, 妊娠第8日目のマウスにHTO1.85〜44.4×10^5Bq/g・体重を1回腹腔内注射し, 曝露後に屠殺して母親の骨髄および胎仔肝の小核含有赤血球数の発生頻度を求めた. HTO投与後5日目の体内蓄積量は3.4〜81.4×10^<-2>Gyとなるが, 81.4×10^<-2>Gyにおける骨髄小核のそれは7.7%(対照1.3%), また胎仔肝の小核のそれは10.6%(対照2.1%)と比べて高い, 胎仔肝の小核含有赤血球数は投与量に応じて増加傾向を示し, 44.4×10^5Bq/g・体重では3.4×10^5Bq/g/体重と比べ有意に高値を示した.
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