研究概要 |
照射後の試料の強度特性を知る為の試験片としてRTNSーII照射用に作られた極徴小試験片(全長12mm,平行部巾1.2mm,平行部長〜5mm)が原子炉照射(JMTR,常陽,FFTF/MOTA)およびイオン照射(p,α照射)にも広く使われている。しかし、この試験片は平行部断面積が小さい(厚さ100μmの時、0.12mm^2)ため、変形荷重は非常に小さく、その為、現在、国内には放射化した極徴小試験片用の高温真空引張試験装置がない。本研究では、極徴小試験片用の高温真空引張試験装置を作製し、合わせて、イオン照射した極徴小試験片の変形・破壊挙動を調べる目的で実験を行なった。 高温真空引張試験装置の作製に当たり, (1)性能;イ)荷重測定の正確さ(ロードセル周辺の温度管理, (ロ)装置の剛性, (ハ)試験片の温度制御, (2)操作性, (3)保守管理性(修理のしやすさ)の三点に留意し, 以下の仕様のものを作製した. (1)用いる引張試験機は東北大学・金属材料研究所・大洗研究施設ホットラボ内の島津オートグラフ(DCSー500)とした. (2)加熱温度;最高900℃, 到達真空度;〜3×10^<-6>torr, 最大荷重;100Kg, 最大変位(最大ストローク);20mm. また, 高温度ヘリウム注入後の低放射化鉄鋼材料(CrーMn合金として, Feー12%Crー15%Mn合金及びFeー12%Crー30%Mn合金を選定)の変形・破壊挙動について調べた. 高温度ヘリウム注入は東京大学・原子核研究所のSFサイクロトロン・30MeVα線照射によった. 15%Mn合金, 30%Mn合金のいずれにおいても室温破壊挙動は基本的には粒内延性破壊を示した. これは, 従来, 50ppnHe程度の注入においても316系ステンレス鋼, あるいはVーTo合金において高温では粒界脆性破壊を示すと報告されていることとは著しく異なる. 今後, 高He注入材の高温変形・破壊挙動を本年度作成した装置で系統的に調べる予定である.
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