平成2年度までに、今まで解明されていなかった日本絵画史の全体像を把握することができたので、本年度の研究は、そうした日本絵画史の全体の流れにおいて、何がその発展の原動力となり、何が新しい形式へと展開させる要素となったのか、その背景を探ることに焦点をおいた。日本絵画史の流れが大きく変わる時期は3回あるが、一つは15世紀に中国絵画に接して大きな影響を受ける時期、一つは18世紀に、中国、西欧を含む諸外国の文物の流入によって触発される時期、最後の一つが明治維新の西欧文化の流入による。いずれも異文化との接触によって変化している点に注目し、日本絵画史の展開の背景に、どの様な異文化の影響や吸収があったのかを、中国文化、西欧文化との係わりにスポットをあてて解明して行くことにした。 中国文化との影響関係の考察においては、平成3年7月に台湾故宮博物院の協力を得て、写真や文献からのみでは解明できない細部の技法の分析を、宋、元、明時代の実作品から調査し、中国絵画から日本絵画への技法継承の行程を明らかにすることができた。この成果は学会での発表を予定している。 又、西欧文化との係わりに関しては、平成3年11月にイタリアで調査を行い、特に絵画内空間(描かれた空間)と現実空間(室内の実空間)との関連について両者を比較し、日本絵画における空間思想を明確にすることに努めた。今後、日本における建築と絵画(障壁画)の関係について更に調査を重ね、精神思想との関係をも研究した上で、成果の発表を予定している。 設備備品に関しては、基礎資料の量が増大してきたため、拡張ハ-ドディスクを導入して文字資料の保存容量を拡張し、又、光ディスクシステを導入して画像処理された資料の保存容量を拡張した。
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