高温超伝導体の研究

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62065004
• 研究機関: 東海大学
• 研究代表者: 田中 昭二 東海大学, 理学部, 教授 (50010624)
• 研究分担者: 前田 京剛 東京大学, 工学部, 助手 (70183605) ; 田島 節子 東京大学, 工学部, 講師 (70188241) ; 内田 慎一 東京大学, 工学部, 助教授 (10114399) ; 藤原 毅夫 東京大学, 工学部, 助教授 (90011113) ; 内野倉 國光 東京大学, 工学部, 教授 (20015564)
• キーワード: 超伝導 / 高温超伝導体 / 酸化物超伝導体 / 超伝導薄膜

研究概要

1.希土類ランタノイド-銅酸化物の高温超伝導探索とその物性: 「物質探索」の立場から、結晶化学的考察に基づいて超伝導体を「設計」する事を試みた。4配位の銅の2次元配列からなる新超伝導体Ln_<2-x>Ce_xCuO_<4-y>(Ln=Pr,Nd,Sm)(Tc=25K)及び5配位の銅の2次元配列及び、Aサイイオンの秩序構造からなるLa_1Ln_1(Sr)CuO_4-y(Ln=Sm,En,Gd)no新物質を発見した。特に前者は「電子」を電荷担体とする初めての高温超伝導銅酸化物であり、超伝導機構のモデルに大きな波紋を投げかけた。「物性研究」については前年度より継続してLa_<2-x>Sr_xCuO_4系の系統的測定を行い、Sr高濃度領域における電子状態及び磁性に転移に伴う特徴的変化を見出した。2.酸化物高温超伝導体の電子物性及び薄膜の研究:新超伝導体Bi_2Sr_2Ca_<n-1>Cu_nO_yを中心に、基礎応用両面にわたり研究を行った。(1)CuO_2層の異なる各組の単一相化につとめ、特に最高のTcを有する2223相については、世界で初めて、良質な試料の合成とその物性測定に成功した。(2)80K相では、CuO_2平面な不純物を意図的にドープする事により、これまで例がなかった、乱れの効果だけを抽出する事に成功した。(3)オゾンを用いた蒸着を行う事により、世界で初めて、この物質のエピタキシアル成長に成功し、大型単結晶薄膜を得る事に成功した。3.酸化物超伝導体の電子物性に関する理論的研究:(1)La_2CuO_4,YBa_2Cu_3O_x(x=6,7,8)及びNd_2CuO_4の電子構造を局所密度関数理論に基づき、線型化マフィン・ティン軌道法を用いて計算した。いずれの結果も実験的事実に反し、強い相関の存在が本質であることを示している。(2)銅位置での大きなクーロン相互作用の極限での2バンド・モデル(近藤格子)を調べた。ホールと局在スピンの相互作用が反強磁性的である場合、正孔のまわりに局所的なスピン一重項の雲が形式される。このスピン一重項の雲の重なりを通して、2つの正孔の間に引力的相互作用の働く可能性を指摘できる。

研究成果

• [文献書誌] 高木英典: Nature. 332. 236-238 (1988)
• [文献書誌] 前田京剛: Jpn.J.Appl.Phys.27. L661-L664 (1988)
• [文献書誌] 和田隆博: Appl.Phys.Lett.52. 1989-1991 (1988)
• [文献書誌] 本多俊久: Jpn.J.Appl.Phys.27. L545-L547 (1988)
• [文献書誌] 和田隆博: Jpn.J.Appl.Phys.27. L1031-L1034 (1988)
• [文献書誌] 生田博志: Jpn.J.Appl.Phys. 27. L1039-L1040 (1988)
• [文献書誌] 池川純夫: Advances in Superconductivity,Proc.1st Int.Symp.on Superconductivity. 743-748
• [文献書誌] 池川純夫: J.App.Phys.March 15. (1989)
• [文献書誌] 生田博志: 東京大学工学部総合試験所年報. 47. 89-96 (1988)
• [文献書誌] 内野倉國光: パリティ NO.3. 3. 51-55 (1988)
• [文献書誌] 前田京剛: Extended Abstract of ISTEC Workshop on Superconductivity.Feb.1-3. (1989)
• [文献書誌] 寺崎一郎: SOR Report ISSP. (1989)
• [文献書誌] 十倉好紀: Nature. 337. 345-347 (1989)
• [文献書誌] 高木英典: Phys.Rev.Lett.62. 1197-1200 (1989)
• [文献書誌] 佐藤寿志: Nature.
• [文献書誌] 十倉好紀: Phy.Rev.B.
• [文献書誌] 十倉好紀: Phy.Rev.B.
• [文献書誌] 高木英典: Proceedings of 2nd NEC Symposium on the Mechanism of High Temperature Superconductivity,Springer-Verlag.
• [文献書誌] 寺崎一郎: Jpn.J.Appl.Phys.27. L1480-L1483 (1988)
• [文献書誌] 前田京剛: Jpn.J.Appl.Phys.
• [文献書誌] 和田隆博: Phys.Rev.B.38. 7080 (1988)
• [文献書誌] 前田京剛: J.Appl.Phys.64. 4095 (1988)
• [文献書誌] 池川純夫: J.Appl.Phys.NOv.15. (1988)
• [文献書誌] 小原春彦: Physica C. 157. 37-47 (1989)
• [文献書誌] 内田慎一: Proceedings of 2nd NEC Symposium on the Mechanism of High Temperature Superconductivity,Springer-Verlag.
• [文献書誌] 田島節子: J.Opt.Soc.Am.
• [文献書誌] 高木英典: J.Appl.Phys.63. 4009-40014 (1988)
• [文献書誌] S.Kohike: Phys.Kev.B.38. 8868-8872 (1988)
• [文献書誌] 内田慎一: Physica C. 156. 157-164 (1988)
• [文献書誌] 田島節子: Physica C. 156. 90-96 (1988)
• [文献書誌] T.Hasegawa: Jpn.J.Appl.Phys.28. L179-L182 (1989)
• [文献書誌] G.M.Luke: Nature.
• [文献書誌] 高木英典: Proceedings of MRS meeting on Advanced Materials.
• [文献書誌] 内田慎一: Proceedings of MRS meeting on Advanced Materials.
• [文献書誌] 田中昭二: Jpn.J.Appl.Phys.3-5 (1988)
• [文献書誌] 和泉充: Physica C. 153-155. 964-965 (1988)
• [文献書誌] 藤原毅夫: Jpn.J.Appl.Phys.26. L716-L718 (1987)
• [文献書誌] Y.Hatsugai: Solid State Commun.65. 1271-1274 (1988)
• [文献書誌] Y.Hatsugai: J.Phys.Soc.Japan. (1989)