光誘起電子移動及び関連現象のダイナミックスとメカニズム

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62065006
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 又賀 〓 大阪大学, 基礎工学部, 教授 (30029368)
• 研究分担者: 宮坂 博 大阪大学, 基礎工学部, 助手 (40182000) ; 平田 喜則 大阪大学, 基礎工学部, 助手 (90135674) ; 岡田 正 大阪大学, 基礎工学部, 助教授 (40029442)
• キーワード: エネルギーギャップ則 / 光誘起CS / イオンラジカル対のCR / 電荷移動錯体 / 遷移状態

研究概要

1.分子間、分子内光誘起電荷分離(CS)及び生成したイオンラジカル対の再結合(CR)過程のエネルギーギャップ則につき、超高速レーザー分光による詳細な研究を行い、逆転領域の実験結果のみであったCR過程について正常領域の結果を見出し、ベル型のエネルギーキャップ依存性を確立した。一方、CS過程の実験結果が従来の理論とは合わないことに対して提出されていた説明の詳細な検討を超高速レーザー分光により行い、これら従来の理論に基いた説明を否定し、我々の新しい理論の重要性を明らかにした。2.高極性溶媒中における分子内エキサイプレックス系の光誘起CS、CR反応の100フェムト秒及びピコ秒レーザーによる測定を行い、その結果は上記の新しい理論によりよく説明できることを明らかにした。3.エキサイプレックス的な系よりはるかにD,A間相互作用の強いCT錯体系における光誘起CSとCRの機構を解明するため、TCNBやPMDAと芳香族炭化水素の錯体につき、100フェムト秒・ピコ秒分光による測定を行い励起FC状態からの緩和過程の直接観測を行い、生成したイオン対のCR過程のエネルギーギャップ依存性がエキサイプレックス系の場合とは異ることを明らかにした。4.光電荷移動が関連した典型的有機光化学反応のベンゾフェノン-アミン水素引抜きにつき超高速レーザーホトリシスによる測定を行い、従来考えられていた機構と異なり、極短寿命の遷移状態における電荷移動相互作用により水素移動生成物とイオン対が競争的に生成する機構を明らかにした。5.光合成モデル化合物の、ポルフィリンとメチルビオローゲンや金属ポルフィリンをスペーサーで結んだ系の光誘起CSと分子内ラジカルイオン対の挙動と磁場効果を明らかにし、超高速レーザー紫外多光子ホトリシスにより、無極性溶媒中の芳香族分子やポリスチレンフィルムのイオン化とカチオン-電子ダイナミックスを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] N.Mataga: Radiat.Phys.Chem.32. 177-180 (1988)
• [文献書誌] H.Miyasaka: J.Phys.Chem.92. 249-252 (1988)
• [文献書誌] K.Nakatani: Chem.Phys.121. 87-92 (1988)
• [文献書誌] K.Nakatani: Chem.Phys.Lett. 145. 81-84 (1988)
• [文献書誌] T.Saito: Chem.Phys.Lett. 145. 509-513 (1988)
• [文献書誌] W.Baumann: Ber.Bunsenges.Phys.Chem.92. 700-706 (1988)
• [文献書誌] Y.Hatano: J.Phys.Chem.92. 1008-1010 (1988)
• [文献書誌] W.Baumann: J.Phys.Chem.92. 3742-3745 (1988)
• [文献書誌] Y.Mukai: J.Phys.Chem.92. 4649-4653 (1988)
• [文献書誌] T.Kakitani: J.Phys.Chem.92. 5059-5068 (1988)
• [文献書誌] T.Saito: Bull.Chem.Soc.Jpn.61. 1925-1931 (1988)
• [文献書誌] N.Mataga: Chem.Phys.127. 239-248 (1988)
• [文献書誌] N.Mataga: Chem.Phys.127. 249-261 (1988)
• [文献書誌] N.Mataga: Springer Series in Chemical Physics,48,Ultrafast Phenomena VI,Springer,Berlin. 511-516 (1988)
• [文献書誌] T.Okada: Springer Series in Chemical Physics,48,Ultrafast Phenomena VI,Springer,Berlin. 555-558 (1988)
• [文献書誌] Y.Hirata: Springer Series in Chemical Physics,48,Ultrafast Phenomena VI,Springer,Berlin. 562-564 (1988)
• [文献書誌] 又賀〓: 季刊化学総説(日本化学会編)NO.2. 2-18 (1988)
• [文献書誌] N.Mataga: Photochemical Energy Conversion,Eds.J.R.Norris ＆ D.Meisel,Elsevier. 32-46 (1989)
• [文献書誌] N.Matage: Chem.Phys.
• [文献書誌] A.Yoshimori: J.Phys.Chem.
• [文献書誌] Y.Hirata: J.Phys.Chem.
• [文献書誌] N.Mataga: Tetrahedron.
• [文献書誌] N.Mataga: Molecular Dynamics in Restricted Geometries,Eds.J.Klafter ＆ J.Drake,John-Wiley.
• [文献書誌] H.Miyasaka: Pulse Radiolysis of Irradiated Systems,Ed.Y.Tabata,CRC.
• [文献書誌] N.Mataga: J.Phys.Chem.
• [文献書誌] H.Miyasaka: J.Phys.Chem.
• [文献書誌] H.Yao: J.Phys.Chem.
• [文献書誌] J.D.Batteas: J.Am.Chem.Soc.
• [文献書誌] T.Kakitani: Photosynthetic Research.