研究概要 |
既にわれわれが全塩基配列を決定したδ-クリスタリン遺伝子の一部でエキソンを2個または3個含む断片を, 原核生物のin vitro転写系を用いて転写合成したmRNA前駆体(Pre-mRNA)と, HeLa細胞の核軸出液とを用いたin vitroスプライシング反応系を開発し, その反応機構を解析した. Pre-mRNAの5′末端がキャップ構造をもつ場合, スプライシング反応は著しく促進される. イントロンを2個含む場合, このキャップ構造の促進効果は, キャップ構造に近い方のイントロンのスプライシング反応にしか及ばないことを明らかにした. キャップ構造の類似体を加えると, 上流のイントロンのスプライシング反応だけが阻害される. したがってイントロンを2個もつPre-mRNAの場合, キャップ構造が存在すると, スプライシング反応は上流側のイントロンからProcessiveに起こるように見える. このようなキャップ構造の効果は, それを特異的に認識する核内因子によってなされていると考えられる. このような因子と思われる分子量が約12万のタンパク質を, HeLa細胞の核軸出液中に同定し, 部分精製することに成功した. このタンパク質の同定にあたって, キャップ構造をもつRNAとタンパク質との結合を, ゲルシフト法で検定する技術を開発した. 一方, 大腸菌のリボヌクレアーゼP(RNaseP)のRNA成分について, その二つの機能, すなわち触媒機能とタンパク質サブユニットと会合する機能との, それぞれに関与する領域を, RNA分子内に明らかにした. この研究は, 既に分離されていた突然変異株のRNAサブユニットの機能解析と, 新たに開発したきわめて有効な部位特異的突然変異導入法を用いて, 人工的に多数の変異体RNAを作成し, その機能を解析することによってなされた. またRNasePのRNAサブユニットの二次構造を, 野性型および変異体について, 化学修飾法によって明らかにした.
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