研究概要 |
本研究課題は以下に示す5つの分担課題のもとに遂行された. 1.コムギヒストンH3, H4遺伝子の転写調節に関わるシス領域のうち, 新たに発見したヘキサマー配列に特異的に結合するDNA結合タンパク質(HBP-1)の存在を明らかにした. このタンパク質はヘキサマー配列の機能からみて, S期特異的遺伝子転写に関与するトランス因子と推定された(岩淵). 2.マウスrRNA遺伝子の転写開始の第一段階に働く因子(TFID)を部分精製し, これとrDNAとの結合をDNAフットプリント法で調べた. その結果, -12〜-40のコアプロモターおよびその上流-140近傍迄の領域を保護するタンパク質の存在が示された. この結合はヒトのTFIDでは起らず, 種依存性があった(村松). 3.レトロウイルスLTR領域とその周辺におけるヌクレオソーム形成を試験管内再構成系で解析した. その結果, LTR領域外にのみ数ヵ所のヒストンオクタマー高親和性部位が同定された. これらの領域では, AAAやATTなどの繰り返し構造が見られること, さらにベンディングなどの特異的高次構造をとっていることが示唆された(竹家). 4.ヒトm型カルシウムプロテアーゼ遺伝子の転写調節を調べた. その結果, (1)大小サブユニット遺伝子の発現は転写レベルで共役している. (2)大サブユニット遺伝子の転写には転写開始部位上流約40bpが必須である. (3)-25bp〜-20bpの領域に複数個の負のエンハンサー様配列が存在した. (1)〜(3)の結果より, この遺伝子の転写調節は制御状態からの解除を基本にしたメカニズムが関係していることが強く示唆された. (大野). 5.メンケス病患者の線維芽細胞からメタロチオネイン(MT)IIA遺伝子をクローン化し, 正常のMTIIAとその構造を比較した. その結果, 非コード部位にはいくつかの変異が見られたが, コード部位やコアプロモーターなどの主要調節部位には全く変異は認められなかった.
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