研究概要 |
過去2年間の班員による研究実績をふまえ, 本年度は, コラーゲン代謝異常症病因解析法の確立と, 組織形成に異常をもたらす非コラーゲン性マトリックス成分の解析に焦点を絞って研究を行った. まず, Ehlers-Danlos症候群(EDS)および骨形成不全症(OI)患者皮膚生検組織からの線維芽細胞取得, 放射活性標識プロリンのとり込みによる産生コラーゲンおよび非コラーゲン性タンパク量の定量法, SDS-PAGEによる産生コラーゲンの型分析から, 過去3年間に依頼を受けた50症例以上のうち, I型コラーゲンのα2鎖欠損例2例, フィブロネクチン欠損例, 4例(以上いずれもEDS), I型α1鎖中のGly→Cysへの変異例, 1例(致死性OI),プロテオデルマタン硫酸欠損例, 1例(EDS)が検出された(永井, 新海), また, コラーゲン生合成過程における修飾酵素のひとつ, リジルオキシダーゼの微量定量のため, ニワトリ大動脈由来の精製酵素に対する單クローン抗体を作成し, ヒト臍帯由来同酵素と交叉反応を示すクローンを選択し(IgM), ELISAによる定量法を確立した(早川), 藤田班員は先天性ビタミンC欠乏症のモデルと考えられる, 遺伝性骨形成異常ラット(ODラット)における骨減少の病態を骨潅流系を用いて調べ, アスコルビン酸は, 骨芽細胞の増殖, 分化に重要な役割を果しており, その障害がODラットにみられることを明らかにした. 先天性結合組織異常と同組織内架橋成分との関係を明らかにするため, 剖検別ヒト大動脈壁および尿中ヒスチジノアラニンの定量を行い, 大動脈壁においては加令とともに含量が上昇すること, 尿中では乳幼児では成人より高く, EDS, OI(各1例)においても高値を示した(藤本). 鈴木班員は, 種々の先天性軟骨形成異常マウスの硝子軟骨中に分布するII型コラーゲンとIX型コラーゲンの分布に相関があるかどうかを, 各抗体を用いて発生過程を調べ, とくに相関はみられなかったが, IX型のマトリックス形成における重要性を示唆した.
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