研究概要 |
昨年度に引きつづいて生体機能物質 特に細胞の生物活性発現に関係する重要な有機化合物の化学合成的研究に焦点が当てられた以下のような研究が実施され, それぞれ所期の目的を達した. 1.細菌の表層物質は人間の細胞機能に対して免疫活性など重要且つ特異な作用を示す. ブラム陰性菌の細胞表面には内毒素活性が知られている. その活性本体リピドAが既に合成されている. 本研究ではさらにその生合成前駆体, ならびにリピドAにKDOと称する多糖部が結合したリポポリサッカリド(LPS)の合成が行われた(芝). 2.細胞の分化誘導活性を持つビタミンD誘導体, ビタミンDアナログおよびヒトデ卵ゼリー中の精子先体反応誘起活性ステロイドサポニンCo-ARISIIなどが合成された(池川). 3.細胞表層に存在し生体情報に関係する概鎖として注目されるムチン型糖ペプチドの最初の試みとしての全合成への方法が開発された(小川). 4.さらにはガングリオシドの神経芽腫瘍細胞に対する分化誘導作用の分子レベルでの研究の一貫として, 種々の両親媒性シアル酸誘導体の神経突起伸長, 形成作用が調べられ, その機構が考察された(永井). 5.生体機能物質として注目されるスフィンゴ脂質の一種であるセレブロシドB1は蕃番より單離され抗潰瘍作用を示す. このセレブロシドB1が合成されるとともに, 抗ウィールス活性を示すホヤのアルカロイドであるユーディストミンの合成研究も行われた(日野).
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