研究概要 |
本研究班では前年度にひきつづき化学的に反応活性な有機金属分子について, 基礎的な研究を推進して来た. 以下に各々の班員の研究成果の大略を記す. 共役ジエンの重合反応に触媒活性の大きい, 有機チタンなどの活性種について分子軌道法により調べ, ジエンが金属と結合する場合の立体的及び電子的要因と結合後のジエンの反応性に及ぼす電子的効果を明らかにした(中村). ジシラニル鉄錯体の光反応で生ずるシリレン型錯体について, その構造と反応経路に及ぼす立体的及び電子的要因を調べ反応機構を確定した(荻野). 反応性の高い遷移金属ケテン錯体を新たに合成し, その構造と反応性を調べ, 新型の複核ビニルアルコール錯体をはじめて単離, その構造と物性を調べた(宮下). 高度に反応活性な各種のシリレン分子を高真空中で発生し, マイクロ・ウェーブ精密分光法によりそれらの分子構造を精度良く決定した(広田). 金属表面の触媒作用の中心となる有機金属活性種のモデルとして2核ロジウム錯体をとりあげ, 架橋しているCH2と末端のCH_3基の間の結合生成プロセスをab initio法にて精密に検討し, 最も重要な遷移状態での金属とC2-H_5基の独得の相互作用がはじめて理論的に示された(諸熊). 反応活性が非常に高く, ジエンの反応で触媒作用を示すチタン・ジエン錯体, (C_5Me_5)TiX(diene), の内dieneとして, 1,4-ジフェニルブタジエン及び2,3-ジフェニルブタジエンを持つもののX線結晶解析を行い, フェニル基の影響により, チタンへのジエンの配位構造が全く異るという有機金属化学の基礎として重要な結果を得た(笠井). ニオブ及びタンタルの正八面体型6核クラスターのアルキル錯体を新たに各種合成し, それらの構造をX線解析によって調べ物性と反応性を調べた(斉藤).
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