研究分担者 |
宇井 理生 東京大学, 薬学部, 教授 (50001037)
斎藤 寿一 自治医科大学, 医学部, 教授 (10048994)
井村 裕夫 京都大学, 医学部, 教授 (10025570)
清水 孝雄 東京大学, 医学部, 助教授 (80127092)
塩谷 弥兵衛 大阪大学, 医学部, 教授 (60028347)
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研究概要 |
1.バゾプレシン分泌の抑圧反応を指標として恐怖の情動ストレスに対する侵害刺激の頻度の効果と情動学習の効果を解析した. その結果, 情動の脳機構は侵害刺激が活性化する生得的神経回路と学習によって獲得される習得的な信号伝達によって活性化されることが明らかにされた(八木班員). 2.松果体の神経支配について電顕標識法および電顕免疫化学法を用いて調べたところ, カテコラミン神経は無髄線維に含まれ, 松果体細胞とシナプス結合を形成しないことおよびペプチド(CGRP)無髄神経繊維中に含まれ, その終末は松果体細胞に接合していることを発見した(塩谷班員). 3.リポキシン系についてLTA4ヒドラーゼが基質により失活する「自殺酵素」の特性をもつことを発見し, 12-リポキシゲナーゼの分離抽出に成功した(清水班員). 4.下垂体前葉のプロラクチン分泌促進因子であるVIPの受容体分子の濃度がプロラクチン分泌抑制因子であるドーパミンによって減少することを発見した(井村班員). 5.ANPペプチドを脳室内に投与するとバゾプレシン分泌反応が減弱しバゾプレシン分泌を実験的に亢進させると脳内ANP受容体分子の数が増すことを発見した(斎藤班員). 6.細胞膜の信号変換の分子メカニズムについて, 膜のGiタンパクが活性化されαサブユニットにGTPが結合するとβ・γサブユニットが遊離してこれがアデニルシクラーゼ活性を抑制することを発見したた(宇井班員). 以上, 脳の可塑性に関与する液性因子のはたらきについて, 個体レベルから分子レベルにわたって多くの新しい事実が発見された. これらの発見は個体レベルの脳の可塑的変化を分子レベルで説明する方向へ研究を展開させる土台となるものである.
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