研究概要 |
生体系とくにヒト皮膚に光線過敏を引起こす物質の光化学プロセスについて検討した. 光線過敏を引起こす物質には光毒性物質と光アレルギー性物質があり, 本研究では特に前者について検討した. 主たる理由は光毒性物質は光化学療法用増感剤として利用される可能性があり, 光化学プロセスの解明が新しい光化学療法の開発の手がかりとなり得ると考えるからである. 昨年度, 本研究グループは難治性皮膚病-乾癬の治療に経験的に適用され効果を挙げてきているPUVA光化学療法の光化学プロセスの必須前提条件を解明した. すなわち, PUVA光化学療法用増感剤ソラレン化合物がヒト皮膚細胞内の核・膜・質のいずれに局在するかを判別する蛍光顕微鏡観察手法を開発し, ソラレン化合物が細胞内DNAに取り込まれることを証明した. 本年度はこの手法を更に, 松尾が臨床的に見出した光毒性物質4種(アフロカロンAFQ・ピロキシカムPRX・クロルプロマジンCPZ・メキタジンMQZ)とレーザ治療用増感剤ヘマトポルフィリンHEPに適用し, これら医薬品の細胞内局在部位を明らかにした. 我々の開発した手法に使用される細胞は培養細胞ではなく, ヒト皮膚口腔粘膜である. この口腔粘膜の構造と試料細胞としての適性はほとんど研究されていないので, 本年度はこの点も検討した. 本年度の主な成果を以下にまとめる. 1)口腔粘膜細胞の構造をメチレンブルー, ギムザ, エオシン, ローダミン123の各染色より検討した. 細胞核DNAの存在は昨年度明らかにしてあるが, 質部のミトコンドリアの存在が明らかとなった. 2)口腔粘膜細胞は生理的食塩水分散状態で200分以上生細胞として使用できると判明した. 3)AFQとPRXは細胞核と膜部に, CPZ・MOZ・HEPは膜部のみに取り込まれ濃縮されると判明した. 以上よりこれら物質の局在部位(細胞内)が明らかとなり, 光毒性が発現される細胞内部位が推測された.
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