研究概要 |
癌治療に対して有効な化学治療法剤の開発は急務であり, 新しい抗腫瘍剤の化学合成法の基礎研究を行った. とくに有機金属化合物における金属元素の特性を活かした新反応の開発を主眼として, 以下に示す研究を行ない, 新しい複素環化合物の高選択的合成法を見出した. 1.非安定化アゾメチンイリドの合成とピロリジン誘導体の立体特異的合成反応の開発 1, 3-双極子試薬は5負環状複素環化合物を合成するために, 簡便かつ効率的な試薬として知られているが, 一般に双極子中心を安定化しうる置換基を持つ1, 3-双極子試薬の生成は容易であるが, そうでないものとくに無置換体を得ることは困難であった. 今回, トリメチルシリルメチルアミノメチルエーテルを新たに合成し, その反応を検討したところ, 有機ケイ素化合物の全く新しい反応である1, 3-脱離反応が円滑に進行し, アゾメチンイリドの無置換体を得ることが出来た. とくにこのようにして得た母体のアゾメチンイリドと種々の活性アルケンと反応して対応する3, 4-二置換および3-置換ピロリジン誘導体を高収率で与える. 本反応は完全に立体特異的に進行した. 反応はシリルトリフラート, シリルヨージドあるいはグレンステッド酸を解媒として進行し, フッ化セシウムの存在により収率の向上が観察された. 2.二硫化炭素から容易に誘導できるケテンジチオアセタールを利用して, DNA合成阻害によって抗癌作用を示すと考えられるピラゾロ〔3, 4-α〕ピリミジン誘導体の一般的合成法を開発すべく, まずチオアミドやメチルジチオカルボキシンレートとテトラエチレンオキシドとの反応により反応性に富む極性エチレン化合物を合成した. これら化合物とグアニジンとの反応よりピリミジン誘導体を得た.
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