研究概要 |
ルテニウム錯体を用いる触媒反応の素反応モデルとして, 〔RuCIH-(CO)(PPh_3)_3〕(1)および(RuCIH(CO)(dppe)(PPh_3)〕(2)に対する有機不飽和化合物の挿入反応を研究した. 1は10°Cでアリルアルキルスルフィドと反応して, 挿入錯体(3)が単離された. 3は3-(アルキルチオ)プロピルーC, S基を含む. 3のNMRは-40°C以上で温度変化を示し, SR基の反転による平衡の存在を示した. -50°CでのP-NMRから, 2ヶのホスフィンがシス位にあることと, 前記の反転がこの温度で凍結されることが確かめられた. 1とアリルフェニルスルフィドと50°Cで反応して, 〔{RuCI-(SPh)(CO)(PPh_3))(CH_2CHCH_2SPh)}_2〕(4)を与えた. 4はPhS基を架橋配位子とする二量体と推定された. P-NMRは非常に複雑なパターンを示した. 1と1, 2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)とを室温で反応させると, 置換生成物2が得られた. 2の構造は, 1と類似していることがNMRより結論された. 2と2-ビニルピリジンとを66°Cで反応させると, 挿入錯体(5)が生成した. 5のC-NMRより, 2-(2-ピリジル)エチル基はdppeのトランス位に配位していることがわかった. 2とマレイン酸ジメチルおよびジベンジルとを66°Cで反応させると, それぞれ挿入錯体(6)および(7)を生じた. 6は三種の異性体混合物から成り, 分離できなかった. 7も二種の異性体から成るが, 主成分で7aがカラムクロマトグラフィーにより分離された. 1と光学活性ジホスフィン, (R,R)-DIOPとを室温で反応させると, 置換生成物(8)を生じた. 8を80°Cに加熱すると, 一部異性化して混合物に変った.
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