研究概要 |
「有機ケイ素および有機典型金属化合物から発生するラジカルイオン種の物性と反応性」および「有機ケイ素および有機典型金属化合物から発生するラジカルイオン種の合成化学的利用と機能開発」の2課題を中心に研究を進め, つぎのような成果を得た:1.(1)Cu(BF_4)_2の存在下, アリールメチル基 アリル基を置換基としてもつケイ素化合物, ゲルマニウム化合物. スズ化合物のメタノールーアセトニトリル溶液に光照射すると, これら14族(4B族)有機金属化合物の酸化的加アルコール分解反応が起って, 相当するアリールメチルメチルエーテルおよびアリルメチルエーテルが生成した. 同様の光加アルコール分解反応は他のアルコールを用いても効率よく進行した. (2)この光加アルコール分解反応は14族有機金属化合物からCu(II)塩への光電子移動によって生成する有機金属化合物のラジカルカチオン種を経て進行するものと推定した. また, この推定を支持する結果を得た. 2.(1)2-置換+1.1-ジシアノエテン類(置換基:アリール基, ヘテロ芳香環基, アルキル基), アリルトリブチルスズ化合物, 有機ヨウ素化合物を含むベンゼン溶液に光照射するか, またはアゾビスイソブチロニトリルを加えて加熱すると, エテン類への二成分付加反応が起って, エテン類のCN基のα位にアリル基, β位にヨウ素化合物からの有機基が付加した化合物が高選択的かつ高収率で生成した. (2)この二成分付加反応は, ジシアノエテン類以外の電子不足型アルケンにも拡張適用することができた. また, この反応の置換基選択性は高く, 各種置換基をもつ有機ヨウ素化合物を用いても, ヨウ素の結合する炭素上でのみ反応が起った. (3)この反応はスズ化合物から発生するトリブチルスズラジカルが鍵中間体となって進行することがわかった. 3.以上の反応について, 活性種の化学的特性, 合成化学的特性などに関する多数の新知見を得た.
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