研究概要 |
従来より, 相同的組換えは染色体全体に均等にではなく, 局在化して起こることが観察されてきた. この現象に対する分子レベルでの実験的根拠としてλファージのX(カイ)配列がある. このX配列(5-GCTGGTGGT-3)はλファージ上でその前後約10KbのDNAの相同的組換えを活性化し, 極性を有することが知られている. 一方我々は最近大腸菌のRNaseH欠損変異株を解析する過程で, この株特異的に活性化する相同的組換え点の存在を示唆する以下の様な結果を得た. つまり染色体DNA断片中には, 自律複製能のないK^r_mDNA断片と結合し, 環状DNAとしてRNaseH欠損株にトランスフォーメーションした場合, それが染色体に組込まれたもの以外に, 逆に組換えで再度プラスミド状DNAとして回収されるもの(環状化活性)があることを見出した. 当初このDNA断片には自律複製能があると考え, 誤ってoriHと名付けたが, 分離した8種のoriHDNA断片のうち7種が複製終結点(terC)領域に位置していた. 本研究では, oriHDNAを含め, terc領域(〜300Kb)全域から, 20種以上のDNA断片を選択し, RNaseH欠損株中での「環状化活性」と同時にλファージ上での「X活性」の有無を調べ, 両者の関係を明らかにしようとした. その結果, 環状活性(+)の10種のうち1種を除き全てX活性(+)であったが, 環状化活性(-)のもの12種のうち, X活性(+)5種, (-)7種と分離した. またX活性(+)の8種のうち, 5種が極性を示し, 残りは両方向性を示した. さらに以上のX活性の程度は, 既知のそれとほぼ等しいこと, 宿主がRNaseH欠損株であろうとなかろうと, その活性に変化がないこと, 環状化活性(+)の1クローンの塩基配列を決定したところ, X配列が予想通りの向きで見出されたこと等から, 環状化活性点は, X配列又はX様配列でありRNaseH欠損下では, terc領域に比較的局在するそれらがなんらかの機構で活性化されると考えられる.
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