研究概要 |
本年度は, 異型配偶子植物オオハネモの配偶子接合から接合後48hrまでの, 接合子内における両親由来の葉緑体, ミトコンドリアの増殖・分解の挙動を解析した. その結果, 接合後4hrめ頃から♂・♀由来不明の小ミトコンドリアの, 接合後9hrめ頃から♂由来葉緑体の分解像がそれぞれ見られ始め, 24hrめ頃にミトコンドリアの分解終末期を, 48hrめ頃に葉緑体の分解終末期を迎えることがわかった. これら分解像の出現とその進行はリソゾーム様顆粒の出現と波長のパターンと期を同じにしている. そこで, リソゾーム指標酵素の酸性ホスファターゼ(AcPase)活性の検出と葉緑体, ミトコンドリアの分解との関係を電顕的顕微化学反応による解析を行なった. 接合後1hr経過するとゴルジ層板及びゴルジ小胞に強い活性が現われる. この状況はその後24hr継続する. 一方, 接合後4hrめ頃になると, 球形化した小形ミトコンドリア(その由来を示す証拠は本植物に関しては未だ見つかっていないが, ♂由来と予想される)が自己貧食胞と思われる膜形によって囲まれ, 分解が始まる. 分解開始の徴候はミトコンドリア基質の電子密度の急激な上昇である. 以後膜系の分解へと進むが, この間に貧食胞はAcPase活性を示すゴルジ起源の小顆粒を多様数含む多包体に合流する. ミトコンドリアの分解はゴルジ体におけるAcPase活性の減衰が始まる接合後24hrめ頃に完了する. ♂由来葉緑体の分解はミトコンドリアに遅れること約5hr, 接合後9hrめ頃から開始する. 貧食胞に取り込まれ, 電子密度の上昇と葉緑体包膜, チラコイド膜の崩壊へと進む. 接合後12hrめ頃に, 先に進行している分解ミトコンドリアを含む多胞体と葉緑体の分解を行っている多胞体との融合が起こり, 一つのより大形な多胞体の中で両小器官の分解作用が進行する. ミトコンドリアの分解が先に終了し, 葉緑体の分解は接合後48hrめ後まで続く.
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