研究概要 |
アクチンは真核生物に偏在し生物学的に重要な機能を持つことが知られているが, 繊毛虫テトラヒメナではアクチンの存在が長期の研究にもかかわら拘らず証明されていなかった. 細胞の二次元電気泳動でも通常のアクチンがつくるスポットには何にもスポットが存在しないことから, アクチンがあっても大変変異のあるアクチンであることが考えられ, 一次構造と機能を解析するには適していると思われた. そこで, 我々は細胞性粘菌のアクチン遺伝子をプローブにして, テトラヒメナ・アクチンの存在を検討し, クローニングと塩基配列を決定できた. この推定されるアクチンは既知のアクチンと比較して75%しかホモロジーがなく, 多くの部分にアミノ酸の置換をもつものであった. この遺伝子は13Sのpoly A^+ mRNAで活発に転写されているので次に遺伝子産物の同定を行った. このため, 推定されるN未15残基のアミノ酸からなるペプチドを人工合成し, この抗体を調整レイムノブロットで調べたところ, みかけの分子量, 等電点とも通常のアクチンと異なるスポットがテトラヒメナ・アクチンとして同定された. この抗体を用いた蛍光抗体法では, 分裂細胞の収縮環や細胞運動に係る構造が染まるので, 生物学的機能は通常のアクチンと同様であることが示唆された. そこで, これまで誰もが精製しえなかったテトラヒメナ・アクチンの単離を先の抗体を指標にして試みた. アセトンパウダーからのATP抽出物をQ-セファロース, セファクリル等のクロマトグラフィーを行って, 単離に成功した. この精製アクチンは0.1MKClまたはMgcl2で重合し通常のアクチンと区別がつけられる程似たアクチン繊維を形成し, この繊維はヘビーメロミオシンで矢尻構造をとった. また, ミオシンS-1のMg^2-ATPaseも活性化した. しかし, 活性化能は通常のものの8倍しかなく, ファロイジンとは結合せず, DNAaseIとの相互作用を全くしないユニークなアクチンであることが判った.
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