研究概要 |
ネコを用いた急性および慢性実験により下記の成果を得た. 1.頸の指向運動の解析:頚運動は眼球, 体幹, 四肢の運動と協同した指向運動において重要な位置を占めている. 頸筋運動ニューロンは, 反射性, 随意性指向運動のそれぞれの中枢と考えられる上丘, 大脳皮質から, 橋・延髄内側網様体(PPMRF)の網様体脊髄路細胞(RSN)を介して2シナプス性EPSPを受けた. PPMRFの指向運動における機能を調べるため, 慢性ネコを用いて実験した. 視野の正中の光点を注視させ, この光が消え視野周辺の光点が点灯するとこの方向へ眼球と頭を急速に指向するようにネコを訓練した. このようなネコで一側のPPMRFの細胞のみをカイニン酸で選択的に破壊すると, 破壊と対側への指向運動は正常とほとんど変わらなかったが, 破壊側へ向う眼球, 頭の速い指向運動はほぼ完全に消失した. この指向運動の障害は水平面での眼球, 頸運動に限られたことにより, PPMRFは水平面での指向運動の制御に関与することが分った. 2.前足操作運動の脊髄ニューロン機構の解析:前肢指伸筋運動ニューロンに対する中央肉趾および各指の肉趾からの皮膚反射は高い部位特異性性を示した. これらの皮膚反射の経路のニューロン機構を電気生理学的, 形態学的に検索して下記の成果を得た. (1)後角フィールド電位および単一介在ニューロン活動の記録により, 内側の指からの反射は吻側, 外側からの反射は尾側のニューロンによって中継されることが示された. (2)指の運動核に注入したHRPにより逆行性に標識された介在ニューロンは主にC6-C8のV-VII層, 一部IVに存在した. (3)これらの介在ニューロンの少なくとも一部は運動核内から低い閾値で逆行性に興奮し, 実際に運動核に終止することが確かめられた. (4)皮質脊髄路および赤核脊髄路の刺激は皮膚反射を介在ニューロンのレベルで促通した. この介在ニューロン促通の機構は二つの下行路で相違した.
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