研究概要 |
神経突起伸展因子(NOF)を認識し, これと結合する分子(受容体)は, 筋肉側にも, 神経側にも存在するものと考えられる. そこで今回は, 筋肉側の膜分画に存在し, NOFと結合し, かつNOFの生物活性(突起伸展活性)を阻害する分子について追求したので報告する. ニワトリ砂嚢平滑筋の膜分画を0.5%Nonidet p-40で抽出し, その20万g, 60分の上滑をNP-40抽出液とした. 各種濃度のNOFを培養皿に塗布し, 300μgのNP-40抽出液を加えていくと, NOFの突起伸展活性が抑えられた. また一定量のNOFを培養皿に塗布して, NP-40抽出液を漸次増加していくと, NOFの突起伸展活性は30μg/wellで完全に抑えられた. 一方, ラミニンによる突起伸展作用はNP-40抽出液では抑えられなかった. NP-40抽出液は毛様体ニューロンの生存や, 基壁への細胞の結合に対しては影響を与えなかった. トリプシン処理や熱処理で, HP-40抽出液の活性は消失した. DTT処理では活性の低下が見られS-S結合の関与が示唆された. 骨格筋は筋胃とほぼ同程度の活性が存在したが, 大脳の活性は, 筋肉の約1/6であった. NP-40抽出液の阻害活性をもつ成分がNOFと結合するかどうかを調べるために, リカンドフロッティングを行ったところ, 82KDaの蛋白バンドにNOFと結合することが分った. この蛋白質を各種カラムを用いて部分精製した. この部分精製したサンプルをSDSゲル電気泳動にかけ, ゲルをスライスして活性を調べた所, 82KDaの主バンドにNOFの作用を阻害する活性が存在した. lamininに結合する物質(CSAT antigen)やlaminin受容体が知られているが, これらはlaminin細胞結合ドメインと親和性がある. 我々の82KDaの蛋白質はNOFの細胞結合ドメインではなく, 突起伸展ドメインを認識するようである. 今後, 82KDaの蛋白質の精製を進めると共に, 82KDaの蛋白質に対する抗体を作製し, NOF受容体について検討を進めていく予定である.
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