研究概要 |
神経細胞はシナプスで相互連絡し, 情報伝達・処理を行う神経回路網を構成する. この神経回路網は, シナプス新生・再結合により再編成され得る(神経可塑性). シナプス膜・小胞の基本構成蛋白質が解明されつつあるが, それらの機能は殆ど不明である. 私たちの研究室では, シナプス部に大量に存在するカルモデュリン(CaM)結合蛋白質=カルスペクチンを発見し, その機能を追究してきた. 本研究では, 脳の可塑性を支えるシナプス構築蛋白質の機能解明を目指し, カルスペクチンと細胞骨格系(アクチン繊維・微小管・神経原繊維)を中心に細胞骨格関連蛋白質によるその制御機構を検討した. 1.膜裏打ち構造の制御機構:赤血球膜裏打ち構造はスペクトリン(カルスペクチン)の特殊型)・4.1蛋白質・アクチンで構成されているが, 4.1蛋白質がCa^<2+>非依存性にCaMと結合すること, この複合体の構造がCa^<2+>濃度により変化することを示した. 再構成実験から, 「4.1蛋白質-CaM複合体はスペクトリンーアクチン相互作用を促進しているが, Ca^<2+>は複合体の構造変化を惹起して複合体による促進作用を抑制する」というCa^<2+>依存性制御機構を明らかにした. 一般細胞の膜裏打ち構造も類似の制御を受けていることが示唆される. 2.サイトシナリンの機能:チューブリンはMAPs存在下でφ24nmの微小管を形成する. シナプス膜分画より精製したサイトシナリン存在下では見かけ上φ34nmの毛羽だった微小管を形成する. サイトシナリンはチューブリン2量体に1:1のモル比で結合し, MAPsとは拮抗する. 3.シンプシンI:シナプトゾーム膜から84/82kDaのCaM結合蛋白質を精製し, それがアクチン繊維・チューブリン・スペクトリンなどと結合すること, キナーゼIIやcAMP依存性キナーゼの基質になることを明らかにした. 特異抗体により, この蛋白質がシナプシンIであることを同定した.
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